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家族思いで、負けず嫌い。「いい態度でプレーをすること」を大切にするスコッティ・シェフラー【佐藤信人のPGAツアーアフタートーク】
2025年7月24日(木)午後1:41

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北アイルランドのロイヤルポートラッシュゴルフクラブで開催された今季最後のメジャー大会「第153回 全英オープンゴルフ選手権」。ローリー・マキロイの6年ぶりのリベンジなるかで注目を集めましたが、2日目に首位に立ったスコッティ・シェフラーが、2位に4打差の17アンダーで3つ目のメジャータイトルを獲得しました。地元の大声援に包まれてのプレーとなったマキロイは10アンダーの7位タイでフィニッシュ。6選手が参戦した日本勢は、松山英樹選手、金谷拓実選手、河本力選手が予選を突破し、松山選手が7アンダーの16位タイ、金谷選手が2アンダーの40位タイ、河本選手が4オーバーの63位タイで大会を終えました。同大会の模様を、ゴルフネットワークで解説を務めた佐藤信人プロに振り返ってもらいました。
まずは優勝したスコッティ・シェフラーのエピソードから。大会前の会見で語ったシェフラーの発言が大きな話題になりました。その発言を要約すると、次のようになります。
「勝つために人生かけて努力して優勝しても、喜びに浸れるのはほんのわずかな時間。すぐに次の大会がスタートするわけで、ゴルフで優勝したからといって何かが変わるわけではないといつも思う」
またシェフラーは、ゴルフよりも家族の方が大事だと常々口にしており、ゴルフで自分が満たされることはないとも言っています。
その会見を聞いていた人の中には、「シェフラーはゴルフに対する情熱が薄れたのではないか」「もう引退するんじゃないか」と思った人もいるのではないかと思います。ところが、大会がスタートすると、そこにいるのはいつもの“強い”シェフラーでした。
プロゴルファーでありながら、ゴルフでいい成績を収めることが最優先ではない。ワールドランキング1位であり続けるということにもあまり興味がない。その一方で、大の負けず嫌いで、“いいゴルフ”をすることには執着している。そういう他の選手と一線を画す部分が、ある意味、シェフラーの強さだということを改めて感じました。
実際、シェフラーの全英でのプレーは他を圧倒するものでした。前週の「ジェネシス スコティッシュオープン」では、PGAツアーよりも1~2フィート遅いグリーンに苦戦していたようですが、全英までに調整してきたようで、長いパットもしっかり沈めていました。パッティングというのは上手い人でも波があるものですが、強い選手というのは本番にしっかり合わせてくる。シェフラーはその典型といえるでしょう。
優勝を決めたプレーということでいえば、私が彼の優勝を確信したのは、3日目の16番。長いパー3をしっかり乗せてバーディーを奪った瞬間に、いつものように余裕で逃げ切るんだろうなと思ったものです。だから最終日に4打差まで縮まったときも、予想していたより接戦になったとしか思いませんでした。8番パー4でフェアウェイバンカーにつかまりダブルボギーを叩いたときも、崩れるような気配がなく、何事もなかったように9番でバウンスバック。もちろん、勝負事というのは何が起きるかわからないという思いはありましたが、結果的にはいつも通り危なげなく逃げ切りました。
この勝利でキャリアグランドスラムに王手となりましたが、そういう話題になっても、「グランドスラムがどうのこうのというのは、自分が考えることではない」と、いつもの返事が繰り返されることでしょう。それをつまらないという人もいるでしょうが、僕はそれこそがシェフラーの真髄であり、尊敬に値する部分だと思っています。
ローリー・マキロイとロイヤルポートラッシュゴルフクラブとの関係についても少し触れておきましょう。ポートラッシュは北アイルランドでも敷居の高いコースで、マキロイが初めてプレーをしたのは10歳の誕生日だったそうです。それから腕を磨き、16歳のとき同コースで61をマーク。その後マキロイはプロになって、ご存じの通り世界的な名プレーヤーになるわけですが、2019年、その憧れのコースで全英オープンが行われることになりました。
実は、全英オープンが北アイルランドで開催されるということは誰もが予想していなかったこと。マキロイもその知らせを聞いたとき、大いに興奮したと思うのですが、結果は撃沈。そして、6年後、キャリアグランドスラム達成した年に、リベンジの機会がやってきました。残念ながら、今回も雪辱を果たせませんでした、地元のファンにいい姿を見せられたのではないかと思います。
今後、ポートラッシュは間違いなく全英開催コースのローテーションに入ると思うので、マキロイには次の機会に頑張ってもらいたい。また、これは私の勝手な想像ですが、十数年後、彼は引退の舞台としてポートラッシュでの全英を選ぶのではないかと思っています。
日本人選手は6人が出場して、松山英樹選手、金谷拓実選手、河本力選手の3人が決勝ラウンドに進出しました。3人とも上位争いには加わることができませんでしたが、最終日は全員スコアを伸ばしていい終わり方ができたと思います。
特に松山選手は最終日、7バーディー、2ボギーの5アンダー。このあとプレーオフシリーズに入っていきますが、今後に期待が持てる最終日になりました。できれば、昨年優勝した「フェデックスセントジュードチャンピオンシップ」で連覇して、「ツアーチャンピオンシップ」でも最高のパフォーマンスを発揮して年間王者になってくれないかなと思っているのですが、果たして。
また、次週の「3Mオープン」に出場する久常涼選手、金谷拓実選手、大西魁斗選手には、少しでも順位が上がるように頑張ってほしいと思います。
(写真:Getty Images)
「ゴルフでいい成績を収めることが最優先ではない」他の選手と一線を画すシェフラー
まずは優勝したスコッティ・シェフラーのエピソードから。大会前の会見で語ったシェフラーの発言が大きな話題になりました。その発言を要約すると、次のようになります。
「勝つために人生かけて努力して優勝しても、喜びに浸れるのはほんのわずかな時間。すぐに次の大会がスタートするわけで、ゴルフで優勝したからといって何かが変わるわけではないといつも思う」
またシェフラーは、ゴルフよりも家族の方が大事だと常々口にしており、ゴルフで自分が満たされることはないとも言っています。
その会見を聞いていた人の中には、「シェフラーはゴルフに対する情熱が薄れたのではないか」「もう引退するんじゃないか」と思った人もいるのではないかと思います。ところが、大会がスタートすると、そこにいるのはいつもの“強い”シェフラーでした。
プロゴルファーでありながら、ゴルフでいい成績を収めることが最優先ではない。ワールドランキング1位であり続けるということにもあまり興味がない。その一方で、大の負けず嫌いで、“いいゴルフ”をすることには執着している。そういう他の選手と一線を画す部分が、ある意味、シェフラーの強さだということを改めて感じました。
実際、シェフラーの全英でのプレーは他を圧倒するものでした。前週の「ジェネシス スコティッシュオープン」では、PGAツアーよりも1~2フィート遅いグリーンに苦戦していたようですが、全英までに調整してきたようで、長いパットもしっかり沈めていました。パッティングというのは上手い人でも波があるものですが、強い選手というのは本番にしっかり合わせてくる。シェフラーはその典型といえるでしょう。
優勝を決めたプレーということでいえば、私が彼の優勝を確信したのは、3日目の16番。長いパー3をしっかり乗せてバーディーを奪った瞬間に、いつものように余裕で逃げ切るんだろうなと思ったものです。だから最終日に4打差まで縮まったときも、予想していたより接戦になったとしか思いませんでした。8番パー4でフェアウェイバンカーにつかまりダブルボギーを叩いたときも、崩れるような気配がなく、何事もなかったように9番でバウンスバック。もちろん、勝負事というのは何が起きるかわからないという思いはありましたが、結果的にはいつも通り危なげなく逃げ切りました。
この勝利でキャリアグランドスラムに王手となりましたが、そういう話題になっても、「グランドスラムがどうのこうのというのは、自分が考えることではない」と、いつもの返事が繰り返されることでしょう。それをつまらないという人もいるでしょうが、僕はそれこそがシェフラーの真髄であり、尊敬に値する部分だと思っています。
ローリー・マキロイとロイヤルポートラッシュゴルフクラブとの関係についても少し触れておきましょう。ポートラッシュは北アイルランドでも敷居の高いコースで、マキロイが初めてプレーをしたのは10歳の誕生日だったそうです。それから腕を磨き、16歳のとき同コースで61をマーク。その後マキロイはプロになって、ご存じの通り世界的な名プレーヤーになるわけですが、2019年、その憧れのコースで全英オープンが行われることになりました。
実は、全英オープンが北アイルランドで開催されるということは誰もが予想していなかったこと。マキロイもその知らせを聞いたとき、大いに興奮したと思うのですが、結果は撃沈。そして、6年後、キャリアグランドスラム達成した年に、リベンジの機会がやってきました。残念ながら、今回も雪辱を果たせませんでした、地元のファンにいい姿を見せられたのではないかと思います。
今後、ポートラッシュは間違いなく全英開催コースのローテーションに入ると思うので、マキロイには次の機会に頑張ってもらいたい。また、これは私の勝手な想像ですが、十数年後、彼は引退の舞台としてポートラッシュでの全英を選ぶのではないかと思っています。
日本人選手は6人が出場して、松山英樹選手、金谷拓実選手、河本力選手の3人が決勝ラウンドに進出しました。3人とも上位争いには加わることができませんでしたが、最終日は全員スコアを伸ばしていい終わり方ができたと思います。
特に松山選手は最終日、7バーディー、2ボギーの5アンダー。このあとプレーオフシリーズに入っていきますが、今後に期待が持てる最終日になりました。できれば、昨年優勝した「フェデックスセントジュードチャンピオンシップ」で連覇して、「ツアーチャンピオンシップ」でも最高のパフォーマンスを発揮して年間王者になってくれないかなと思っているのですが、果たして。
また、次週の「3Mオープン」に出場する久常涼選手、金谷拓実選手、大西魁斗選手には、少しでも順位が上がるように頑張ってほしいと思います。
(写真:Getty Images)
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