海外女子
岡本綾子「経験を積んで、視野を広げていくことが大事」世界の“アヤコ”がセント・アンドリュースでの女子メジャーを振り返る
2024年8月29日(木)午前10:31
「ゴルフの聖地」とされるセント・アンドリュースオールドコース(スコットランド)で開催された「第48回 AIG女子オープン」。毎日トップが入れ替わる混戦模様となった大会は、最終日、首位と3打差の4位タイでスタートしたリディア・コが2位に2打差の7アンダーでメジャー3勝目を飾りました。激戦の模様を、ゴルフネットワークで解説を務めた岡本綾子プロに振り返ってもらいました(聞き手:田中雄介アナウンサー)。
田中 4日間お疲れ様でした。今年も激しい戦いになりました。
岡本 6700ヤードという長さだけではなく、全英ならではの風が吹き荒れていましたからね。4日間、ショットごとに頭を使わなければならなかった選手たちは、本当にきつかったと思います。
田中 全英女子がセント・アンドリュースオールドコースで行われるのは、今年で3度目になります。
岡本 私がやっていたころは、オールドコースでやるなんて考えられませんでした。
田中 まず、4日間を振り返っていただけますか。
岡本 3日目までの上位3人、シン・ジエ選手、リリア・ブー選手、ネリー・コルダ選手が、そのまま三つ巴戦を繰り広げるのかなと思っていたんですけど、優勝したのはリディア・コ選手。ゴルフは最後まで分からないものですね。
田中 まずはネリー・コルダ選手。全米オープンでは初日に10ストロークを叩いて、その後2ヶ月半低迷していたんですが、復活してきました。
岡本 誰にでも波はあるものでね。もともと強い選手なので、ちょっとしたきっかけがあれば復活するとは思っていましたが、今大会で強さが戻ってきたようですね。
田中 しかし、思わぬ所で崩れました。予選ラウンド2日間でボギーはわずか1個だったのに、3日目のバックナンで40を叩き、最終日も14番のパー5でダブルボギーを叩いてバックナインは38。決勝ラウンドのバックナインでの失速が響きました。
岡本 一方のリディア・コ選手は、4日間でボギーが6つしかなく、ダボは1つもない。こういう堅実なゴルフが理想ですよね。技術的にも素晴らしい。上手さという点では、シン・ジエ選手も引けを取らなかったんですが、シン・ジエ選手のゴルフを見ていて、改めて勝つことの難しさを知りました。
田中 シン・ジエ選手のコメントを聞くと、最終日はアゲンストが強く、グリーンに届くクラブがなくなってしまった、といっていましたが。
岡本 確かに最終日は、それまで2時の方向から来ていたアゲンストが1時の方向から来ていましたからね。あの風が吹くと、グリーンに届かせるのは難しい。
田中 しかし、リディア・コ選手も飛距離が出る方じゃない。
岡本 リディア・コ選手の場合は、もともと届かなければ届くところに落として、それでパーを拾いながらチャンスが来るまで待つというタイプ。いつものプレーを淡々とやっていた感じがします。
田中 両者の間では、グリーンを狙うショットのマネージメントが少し違っていたということですか。
岡本 それもありますが、球筋も違います。リディア・コ選手はフェード系とストレートボールを操る選手。シン・ジエ選手はストレート系で、風を使ってグリーンに乗せてくるのが非常にうまいタイプ。2人とも技術的には素晴らしく、どちらがどうというわけではありませんが。
田中 西郷真央選手も初日4位タイ、2日目5位タイ(最終的に7位タイ)と健闘しましたが、インタビューではずっと「悔しい」とこぼしていた印象があります。自分には何かが足りないと。
岡本 いいんじゃないですかね、欲があって。また、自分に対して厳しいということですよね。ただ、別の確度から見れば、欲が深すぎて余裕がないっていう感じもしました。リディア・コ選手にしてもシン・ジエ選手にしても、飛ばないけれどショットメーカーとしての余裕があるという感じがするので。
田中 綾子さんも若いころは貪欲だったんですか?
岡本 私も人の真似をして、それが自分のものになるまで練習しましたけど、その部分が足りないからやるんじゃなくて、「あの人ができるんだったら私もできる」という考えでやっていました。そのやり方はどうあれ、世界のトップと同じフィールドに立てるわけですから、人のプレーを見るというのは、自分の技術向上のためには必要だと思います。
田中 今シーズン、これで女子メジャー5戦が全て終わったわけですけど、なんと日本勢が2大会で頂点に立ちました。
岡本 本当にすごいことですね。私も西郷選手のように勝ちたいっていう気持ちでやっていましたけど取れなかった。ただ私の場合は、「なんで優勝できなかったか」ということは考えたことなかったです(笑)。
田中 その方がいいんですかね?
岡本 性格にもよると思いますけど。
田中 メジャーの中ではどの大会が一番難しいとお考えですか?
岡本 やはり「全英女子」ですかね。特にリンクスで開催されるときは本当に難しい。日本にないタイプのコースですからね。日本でも、海に近いところ河川敷に、フェアウェイにアンジレーションつけて、長さ100ヤード前後のグリーンのあるコースを作ってくれればいいんですけど。それと風ね。日本で、4日間、風が吹く中でプレーをすることはほとんどないですからね。毎日台風の中でプレーしているようなもの。それに「全英女子」と「全米女子オープン」は毎年、コースが変わるから難しい。あとの3つは毎年同じ所で開催されるから、これからも日本人選手の活躍が期待できると思いますよ。
田中 レベルの違いはあれ、多くの日本人選手がメジャー制覇を夢見ていると思います。何が手に入ったら、また何ができるようになったらメジャーで優勝争いができるという“虎の巻”みたいなものはあるのでしょうか。
岡本 いろんな国に行っていろんなコースでトーナメントを消化していくことが大事だと思います。日本でトーナメントが行われているコースは、コースコンディションが完璧で、練習場などの整備も行き届いているなど、贅沢なセッティングになっていますが、世界には様々なコースがありますからね。例えばドイツなんかでは、「どこに向かって打てばいいの?」というような野原のようなコースもありましたからね。そういうところで試合を経験するというのも選手の成長につながると思います。今後、ゴルフ留学をする選手が増えると思いますが、積極的に海外に飛び出して欲しいですね。
田中 今回リポートを務めてくれた有村智恵さんも、「海外では引き出しの多さが勝負を分ける」と言っていましたが、そういうことなんですね。
岡本 経験を積んで、視野を広げていくことが大事。そうすればもっと日本人選手の活躍が見られると思います。昨年あたりから、どの大会でもスコアボードに日の丸を置いていってくれるので、すごく頼もしい限りなんですが、来年はさらなる活躍を期待したいですね。
田中 4日間お疲れ様でした。今年も激しい戦いになりました。
岡本 6700ヤードという長さだけではなく、全英ならではの風が吹き荒れていましたからね。4日間、ショットごとに頭を使わなければならなかった選手たちは、本当にきつかったと思います。
田中 全英女子がセント・アンドリュースオールドコースで行われるのは、今年で3度目になります。
岡本 私がやっていたころは、オールドコースでやるなんて考えられませんでした。
田中 まず、4日間を振り返っていただけますか。
岡本 3日目までの上位3人、シン・ジエ選手、リリア・ブー選手、ネリー・コルダ選手が、そのまま三つ巴戦を繰り広げるのかなと思っていたんですけど、優勝したのはリディア・コ選手。ゴルフは最後まで分からないものですね。
田中 まずはネリー・コルダ選手。全米オープンでは初日に10ストロークを叩いて、その後2ヶ月半低迷していたんですが、復活してきました。
岡本 誰にでも波はあるものでね。もともと強い選手なので、ちょっとしたきっかけがあれば復活するとは思っていましたが、今大会で強さが戻ってきたようですね。
田中 しかし、思わぬ所で崩れました。予選ラウンド2日間でボギーはわずか1個だったのに、3日目のバックナンで40を叩き、最終日も14番のパー5でダブルボギーを叩いてバックナインは38。決勝ラウンドのバックナインでの失速が響きました。
岡本 一方のリディア・コ選手は、4日間でボギーが6つしかなく、ダボは1つもない。こういう堅実なゴルフが理想ですよね。技術的にも素晴らしい。上手さという点では、シン・ジエ選手も引けを取らなかったんですが、シン・ジエ選手のゴルフを見ていて、改めて勝つことの難しさを知りました。
田中 シン・ジエ選手のコメントを聞くと、最終日はアゲンストが強く、グリーンに届くクラブがなくなってしまった、といっていましたが。
岡本 確かに最終日は、それまで2時の方向から来ていたアゲンストが1時の方向から来ていましたからね。あの風が吹くと、グリーンに届かせるのは難しい。
田中 しかし、リディア・コ選手も飛距離が出る方じゃない。
岡本 リディア・コ選手の場合は、もともと届かなければ届くところに落として、それでパーを拾いながらチャンスが来るまで待つというタイプ。いつものプレーを淡々とやっていた感じがします。
田中 両者の間では、グリーンを狙うショットのマネージメントが少し違っていたということですか。
岡本 それもありますが、球筋も違います。リディア・コ選手はフェード系とストレートボールを操る選手。シン・ジエ選手はストレート系で、風を使ってグリーンに乗せてくるのが非常にうまいタイプ。2人とも技術的には素晴らしく、どちらがどうというわけではありませんが。
田中 西郷真央選手も初日4位タイ、2日目5位タイ(最終的に7位タイ)と健闘しましたが、インタビューではずっと「悔しい」とこぼしていた印象があります。自分には何かが足りないと。
岡本 いいんじゃないですかね、欲があって。また、自分に対して厳しいということですよね。ただ、別の確度から見れば、欲が深すぎて余裕がないっていう感じもしました。リディア・コ選手にしてもシン・ジエ選手にしても、飛ばないけれどショットメーカーとしての余裕があるという感じがするので。
田中 綾子さんも若いころは貪欲だったんですか?
岡本 私も人の真似をして、それが自分のものになるまで練習しましたけど、その部分が足りないからやるんじゃなくて、「あの人ができるんだったら私もできる」という考えでやっていました。そのやり方はどうあれ、世界のトップと同じフィールドに立てるわけですから、人のプレーを見るというのは、自分の技術向上のためには必要だと思います。
田中 今シーズン、これで女子メジャー5戦が全て終わったわけですけど、なんと日本勢が2大会で頂点に立ちました。
岡本 本当にすごいことですね。私も西郷選手のように勝ちたいっていう気持ちでやっていましたけど取れなかった。ただ私の場合は、「なんで優勝できなかったか」ということは考えたことなかったです(笑)。
田中 その方がいいんですかね?
岡本 性格にもよると思いますけど。
田中 メジャーの中ではどの大会が一番難しいとお考えですか?
岡本 やはり「全英女子」ですかね。特にリンクスで開催されるときは本当に難しい。日本にないタイプのコースですからね。日本でも、海に近いところ河川敷に、フェアウェイにアンジレーションつけて、長さ100ヤード前後のグリーンのあるコースを作ってくれればいいんですけど。それと風ね。日本で、4日間、風が吹く中でプレーをすることはほとんどないですからね。毎日台風の中でプレーしているようなもの。それに「全英女子」と「全米女子オープン」は毎年、コースが変わるから難しい。あとの3つは毎年同じ所で開催されるから、これからも日本人選手の活躍が期待できると思いますよ。
田中 レベルの違いはあれ、多くの日本人選手がメジャー制覇を夢見ていると思います。何が手に入ったら、また何ができるようになったらメジャーで優勝争いができるという“虎の巻”みたいなものはあるのでしょうか。
岡本 いろんな国に行っていろんなコースでトーナメントを消化していくことが大事だと思います。日本でトーナメントが行われているコースは、コースコンディションが完璧で、練習場などの整備も行き届いているなど、贅沢なセッティングになっていますが、世界には様々なコースがありますからね。例えばドイツなんかでは、「どこに向かって打てばいいの?」というような野原のようなコースもありましたからね。そういうところで試合を経験するというのも選手の成長につながると思います。今後、ゴルフ留学をする選手が増えると思いますが、積極的に海外に飛び出して欲しいですね。
田中 今回リポートを務めてくれた有村智恵さんも、「海外では引き出しの多さが勝負を分ける」と言っていましたが、そういうことなんですね。
岡本 経験を積んで、視野を広げていくことが大事。そうすればもっと日本人選手の活躍が見られると思います。昨年あたりから、どの大会でもスコアボードに日の丸を置いていってくれるので、すごく頼もしい限りなんですが、来年はさらなる活躍を期待したいですね。
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