後悔、怪我に直面した石川遼の決意とは「自分にできる最善を尽くす」
2016年5月27日(金)午前10:52
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PGAツアーに参戦して4年目を迎える石川遼。“PGAで初優勝"の夢を追う石川は今季から意識改革に取り組んでツアーに挑んだ。それは「ミスを恐れず自分のベストを尽くす」プレーをすること。しかし、2月に行われたウェイストマネジメント フェニックスオープンに出場して以来、大舞台でクラブを握る石川の姿はない。「ゴルフはやりたくてしょうがないんですけど、自分が戦える状況じゃないので」と悔しそうな表情で語った石川はゴルフ人生で初めてとなる大きな怪我に直面した。ツアーをしばらく離れた今、見つめる先にあるものは何か、挑戦を続ける石川遼に迫った!
攻めのゴルフを取り戻したい石川「後先のこと考えずに思い切りよく打っていくことが自分の原点」
2015年10月、石川はPGAツアー4年目のシーズンを迎えた。開幕戦こそ予選落ちを喫したが、2戦目の「シュライナーズホスピタルフォーチルドレンオープン」ではこれまでとは違うゴルフをみせた。初日はパットが冴え渡り、5メートルを超える長いパットを次々決め、7バーディ1ボギーで首位とは1打差の5位タイ。続く2日目、好位置につけながらも守りに入らず攻め続けた。それは日本ツアーで見せていた攻めのゴルフを取り戻そうという石川の新たな決意の表れでもあったのだ。
日本ツアーよりも遥かに難易度の高いコース、シード権争いのプレッシャー、アメリカに渡り石川のプレーはいつしか小さくなっていった。しかし、これで勝てるような甘い世界ではない。このままではダメだと気付いた石川は「後先のことを考えずに思い切りよく打っていくことが、小さい頃からの自分の原点なんですよね。もう一度原点に返って、それを極めていくことはできるんじゃないかと思って。それで戦っていくことがPGAツアーなんだと思います。1打1打ベストを尽くすことが今の自分にできること」と原点に立ち返り、意識改革に取り組んだ。
迎えた最終日も変わらず、強気にクラブを振り抜き、苦しい展開を招いても引くことはなかった。しかし、池とバンカーに挟まれた難しい17番パー3で、ハザードを意識するあまり、打球は大きく右にそれてバンカーへ。2打目、3打目も奥の池を恐れて、打ちきることができず、痛恨のトリプルボギー。この試合で初めて攻めの姿勢を失った瞬間だ。
「笑っちゃいますね。17番の1打目、2打目、3打目は全部守りに入っていました。池に入ってもボギーで抑えられるのに、何で逃げたのかなと思います。でもそれも大きな学び。守りに入ったプレーになるとこの舞台では通用しないんだなということはわかったので」と悔しそうな表情で語った。
「攻め続けるスタイルを続けられていたらもっと上手くなっていたし、強くなっていた」
しかし、好調な時でも、不調が続く苦しい時でも、自分の欠点を認める謙虚な姿勢は石川の強さでもある。「昨シーズンまでは自分の最善を尽くそうとしていませんでした。そうするのが怖かったんです。ベストを尽くしてやってみようという気持ちではなく、ミスしないようにという考えが先行してました。遠回りしてでも思うようにやっていなかったから、結果が出せなかったんですよね。今は1打1打ベストを尽くそうと、自分が思ったことをやろう思っています」
自らの殻を破って新たな一歩を踏み出した石川。その心境の変化はプレーにも表れた。第3戦目CIMBクラシックで、グリーン左手前に大きな池がある短いミドルホールで1オンを狙う攻めの姿勢を見せた。結果的に左手前に引っ掛けて池ポチャとなったが、「失敗したときのことはあまり考えないで、自分が思ったことをやって、その1打にできる自分のベストを尽くそうと思っている」とその表情に迷いはなかった。
石川がここまで攻めの姿勢にこだわるには理由がある。「どこまでも馬鹿みたいに攻め続ける。そういうスタイルをアメリカでずっと続けられていたらもっと上手くなっていたし、強くなっていただろうなとすごく後悔はしています。だけど、長期的に優勝というところまで見ていきたいと思うので、常に勝てるプレーというのを自分に自問自答したいですね」とPGAツアーに参戦してから、守りの姿勢に入っていた自分を後悔したからだ。しかし、シーズンの序盤で強気なプレーをみせ、本来の石川らしさを取り戻した矢先に、選手生命さえも脅かす試練が訪れた。
ゴルフ人生で初めての長期休養「一流選手になるためにはどうしたらいいのかを考える期間でもある」
これまでも腰痛で故障に悩まされてきた石川だが、今年に入って、またしても痛みが表れた。思うようなスイングが出来ず、2戦連続の予選落ちを喫して、2月にゴルフ人生で初めて長期休養をとる決断を下したのだ。自身のオフィシャルサイトでは「病院での診断は腰椎椎間板症で椎間板ヘルニアの一歩手前でした」とファンや関係者に現状を報告。そして、公の姿に姿を現したのは2ヵ月後の国内開幕戦、東建ホームメイトカップだった。
そこにはプレーヤーとしての姿ではなく解説者として戦いの舞台を見つめていた。試合から離れることを余儀なくされた彼はそれでも今の自分にできることはないかと新たな挑戦を決めたのだ。「テレビを見ている方にわかりやすく楽しんでもらえるように伝えることはできるんじゃないかなと思っています。テレビでしか見れない人、観戦にいけない人も多いので、そういう人に選手としてなんで良いショットなのか、何で悪いショットを打ってしまったのかということを知ってもらうともっと楽しくなると思うんですよね。テレビで見るのも楽しくなるし、実際に見に行くのも楽しくなるし。実際にどこまで伝えられるかって挑戦ですね」と例え試合にでれなくても常に自分にできる最善を尽くすという姿勢は変わらなかった。
そして休養から2ヶ月、初めてカメラの前で胸のうちを語った。「他の選手より多くの試合にでてきたのが体に無理が生じた。気付くのがもっと遅かったらヘルニアになっていたので、そこまでいかなったってだけでも幸いです」とケガについて経由を説明し、「一度腰をケガしてスイングを思いっきりするってことに一度不安を覚えてしまった以上は絶対に再発しないように、不安がなくなってから試合にでようと思っている。ゴルフはやりたくてしょうがないんですけど、まだ戦える状況じゃない」と現在の状況を話した。
また、復帰の時期については「今の時点で復帰の時期を設けてしまうと、腰に少しでも違和感のある状態で自分が決めたことだから出ようということにはなりたくない。これから先10年というのが、自分ゴルフ人生にのなかで最も重要になってくると思う。そこで一流選手になるためにはどうしたらいいのかを考える期間でもあります」と段階を踏んでツアー復帰に望むようだ。
まだ復帰は見えていない石川だが、今はじっと我慢をするとき。前よりも強くなってPGAツアーに戻ってくるために。本当の戦いはそこから始まる。
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石川遼挑戦記 ?2016春?放送予定
「石川遼挑戦記」シリーズの2016年第1弾。ツアー4年目の石川遼。2月の「AT&Tペブルビーチプロアマ」を欠場して以降、戦列から遠ざかっている状況が続く石川。欠場の原因となった腰の痛みを軽減できる体づくり、スイングの改善を目指し、トレーニングに励む。ツアーへの復帰、そして初優勝。石川が今、見つめる先にあるものは何か?自分への挑戦を続ける石川遼の姿を追った。