小松直行の週刊オフチューブ「M2Mロシアンオープン/ロシアのゴルフ」
2014年7月24日(木)午後2:16
LIVE FROMのMCや欧州ツアー中継の実況を担当している小松直行アナウンサーが、ゴルフ最新ニュースをピックアップ。小松さんならではの視点からゴルフ界の最新動向をお届けします!
目次:
1?M2Mロシアンオープン
2?ロシアのゴルフ史
3?小耳:ゴルフ不人気の理由は単なるタイガーバブルの終焉?!
M2Mロシアンオープン
2012年に公式戦に復活した試合です。下部チャレンジツアーの試合であった時期もあり、2度目の復活となっています。以前はロバー
ト・トレント・ジョーンズJr設計のモスクワCCで開催されていましたが、現在は同じモスクワ市街から北43kmにあるツリボー・ゴルフ&ポロクラブ。
J・ニクラス
設計で2007年に開場したコースです。敷地内にはスキー場とポロの競技場もあり、今回はポロの試合(ロイヤル・ブリティッシュ・ポロ・デイ)も同時開催でたっぷり楽し
んでもらおうという設定になりました。アジアツアーのメンバーにも10人の枠があります。
【M2Mロシアンオープン放送期日】
2014年07月30日(水)午前6:00?8:00
2014年07月30日(水)午前8:30?10:30
2014年07月31日(木)午前6:00?8:00
2014年07月31日(木)午前8:30?10:30
*川村昌弘選手が出場します。欧ツアー公式戦は6試合目。今年4月のマレーシアオープンでの13位タイがベストです。
**2016年リオ五輪にゴルファーとして出場を目指すソチ出身の元テニス選手、エフゲニー・カフェルニコフも出場です。
ロシアのゴルフ史
ロシアのプラウダ紙はかつて、ゴルフは「およそ1000年前、カフカス人(Caucasian)の羊飼いが熱中したゲーム」であると書きました。1917年のロシア革命以降、ゴルフはブルジョワの娯楽とみなされましたが、いまでは国内に24コース。ロシアゴルフ協会に登録している会員数は2014年現在で1181人ですが、国内には年3回以上プレイするゴルファーが1万7000人以上おり、欧州諸国やアメリカ、イスラエル、オーストラリアに住むロシア人ゴルファーは約10万人になるとゴルフ協会では推計しています。プーチン大統領はゴルフよりスキーと柔道がお好みのようですが・・・・。 小松の小耳 今年の全米プロは熾烈な戦いになりそう:8月7日からケンタッキー州ルイビルのバルハラGCでおこなわれる第96回全米プ
ロゴルフ選手権は賞金総額1000万ドルというだけで凄い。加えてアメリカのプレイヤーにとってはライダーカップ自力出場をかけた最後のポイント獲得試合でもあり、現時
点で上位9名に入っていないパトリック・リード、ブレンドン・トッド、クリス・カーク、ライアン・ムーア、ハリス・イングリッシュといった初出場を狙うプレイヤーたち
や、フィル・ミケルソン、ウエブ・シンプソン、キーガン・ブラッドリーらメジャー勝者が自力で出場を決めるのかが注目される。もし自力出場がかなわなくても、トム・
ワトソンにキャプテンピックとして選んでもらえるような説得力ある成績を出せるかどうかが勝負である。胸椎椎間板除去手術のために3月から7月まで休んでいたタイガー
・ウッズが、3人のキャプテンピックに入ることは間違いないだろう。去年の覇者ジェイソン・ダフナーやウッズ、ミケルソンをはじめ、15名の歴代チャンピオンが出場する
。世界ナンバーワンのアダム・スコット、マスターズ2勝のババ・ワトソン、今年の全米オープン勝者マーティン・カイマー(2010年全米プロ勝者)、全英オープンでメジャ
ー3勝目をあげたローリー・マキロイ(2012年全米プロ勝者)が顔を揃える最強のフィールドとなる。 <資料:http://time.com/money/3007501/tiger-woods-british-open-golf-industry/>
レーニンの友人で米共産党設立メンバーのアーマンド・ハマー博士が、1974年のある日、「西のビジネスマンを招き寄せるのに必要なものは3つ。リムジン、ビジネス・センター、ゴルフコースですよ」とブレジネフ書記長にゴルフコースの必要性を進言。すぐにロバート・トレント・ジョーンズSr&Jrが青写真を持ってハマー博士とともに視察に行ったそうです。しかし、ブレジネフ政権下、旧来の共産党幹部の反対やアフガン侵攻(1979)もあってコース建設は多難。ようやく、ロシア外務省とロバート・トレント・ジョーンズJrが契約書を交わしたのは1986年。モスクワCCはこうして1993年に9ホールができあがり、翌年に18ホールが完成。唯一のチャンピオンシップコースとなりました。
1992年にはロシアゴルフ協会が発足しており、1993年9月に初めてのロシアオープンが開催されました。
ほかにモスクワでのコース建設には、スウェーデンのアイスホッケーの立役者、スベン・トンバ・ヨハンソン(1957年W杯優勝)が貢献しています。トンバは客船を貸しき
って著名人を集め、川へ向けて球を打って見せながら、コース建設のアイディアを説明。1990年、ドヴジェンコ通りに9Hコースができあがり、モスクワシティーGC(通称
Tumba)となりました。開場式典にはサッカーの王様ペレやマイク・タイソンが出席したそうです。
ロシアオープンは1996年に賞金王総額10万ドルの試合として、欧州2部のチャレンジツアーの公式戦となり、その後、欧州ツアーの一戦となって現在に至ります(表)。
開催年
コース
勝者
2013
ツリボーG&ポロクラブ
マイケル・ホウイ(北アイルランド)
2012
ツリボーG&ポロクラブ
アレクサンデル・カルーカ(仏)
2011
ツリボーG&ポロクラブ
サム・リトル(イングランド)
2010
ツリボーG&ポロクラブ
カルロス・デル・モラル(スペイン)
2008
レ・メリディエン・モスクワCC
マイケル・ルンドバーグ(スウェーデン)
2007
レ・メリディエン・モスクワCC
パー・アーリック・ヨハンソン(スウェーデン)
2006
レ・メリディエン・モスクワCC
アレハンドロ・カニザレス(スペイン)
2005
レ・メリディエン・モスクワCC
マイケル・ルンドバーグ(スウェーデン)
2004
レ・メリディエン・モスクワCC
ゲイリー・エマーソン(イングランド)
2003
レ・メリディエン・モスクワCC
マーカス・フレイザー(豪)
2002
モスクワG&CC
イアン・パイマン(イングランド)
2001
モスクワG&CC
ジェイミー・ドナルドソン(ウェールズ)
2000
モスクワG&CC
マルコ・ベルナディーニ(伊)
1999
モスクワG&CC
イアン・パイマン(イングランド)
1998
モスクワG&CC
ウォーレン・ベネット(イングランド)
1997
モスクワG&CC
ミケール・レアーレ(伊)
1996
モスクワG&CC
カール・ワッツ(イングランド)
Yellow:CT(チャレンジツアー)、Limegreen:CTとETのデュアルランキング試合、Green:ET(ヨーロピアンツ
アー)
クラレットジャグにイエーガーマイスターを入れて飲む:去年全英オープンに勝ったあとでフィル・ミケルソンは優勝杯であるクラレットジャグに1本4万ドルのロマネコ
ンティを入れて飲んだそうだが、R・マキロイは56種類のハーブの溶け込んだドイツ産のリキュール、イエーガーマイスター(35度)で楽しんだらしい。
ウッズ復帰、マキロイ優勝でもゴルフは低迷?:タイガー・ウッズが復帰してアメリカでのゴ
ルフのテレビ視聴率は上がったが、用品販売の落ち込みは回復の兆しがないようだ。ゴルファーは2008年をピークに減り、閉鎖されるコースは新設数を上回る状況は続くと
予想されている。その理由について米マネー誌はいくつかの要因を挙げている。
1)みんな忙しすぎる:米国で余暇時間は男女ともに減っているという調査結果がある。女性の家事に当てられる時間も増える一方、男性が家のメンテナンス等の仕事をする
時間も増えているという。男女差は依然としてあり、女性より男性のほうが一日あたりの自由時間は多い。
2)ゴルフは高い:安くゴルフを楽しむ方法はいろいろあるが、依然としてゴルフは高くつく。新しいドライバーを買うとしたら、あるいはゴルフクラブの会員になるとした
ら、いくらかかるのかを考えれば、「お金がかかる」と言われても否定しにくいし、イメージは変わらない。
3)子どもが参加しにくい:親たちは子供に学校以外の習い事や勉強をさせるので時間がない。昔のように子どもが地元のクラブでキャディーをするということもなくなった
。制度を再構築しようという提案はあるが、まだ実現していない。
4)ゴルフは難しすぎる:ゴルフよりもずっと早く楽しめるようになるスポーツはたくさんある。午前中に基本を教われば、午後にはそこそこ楽しめるスポーツがたくさんあ
る中で、ゴルフは基本技術習得に時間がかかる。
5)ゴルフ界は変革を好まない:直径40cm近いホールでプレイしようといった提案があっても、最終的には旧来の伝統的なものを変えたくないと考えるゴルファーは多い。
6)タイガーバブルの終焉:ゴルフ自体の凋落ではなく、自然な浮き沈みの過程にあるだけで、現在の低迷は、タイガー・ウッズの登場とともに盛り上がった人気がしぼんで
行っているだけのこと。不倫スキャンダルと相次ぐケガも作用して、ウッズが人々にもたらしたゴルフ熱が冷め始めたということだ。
という分析だが、プロゴルフは大丈夫なのだろうか、と思う。いまや賞金総額1000万ドルの試合が2つもできてしまったが、いったん上がった賞金を下げるのはかなりの否
定的イメージになりかねない(小松直行)。