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海外男子

松山とトーマスの同組対決で見た勝負のアヤ 「明暗を分けた16番のパーセーブ」

2017年8月14日(月)午後1:55

松山英樹のメジャー制覇に注目が集まった「全米プロゴルフ選手権」最終日。難コース「クウェイルホロークラブ」を舞台に優勝争いは大混戦に。

松山英樹は首位でハーフターンしたが、後半に入ると11番から3連続ボギーを叩くなどスコアを伸ばすことが出来ず後退。あと一歩のところで、メジャータイトルはこぼれ落ちた。優勝は松山と同組でプレーしたアメリカの若手ジャスティン・トーマス。6バーディ、3ボギーの「68」でラウンド。通算8アンダーでメジャー初制覇を成し遂げた。

ゴルフネットワークで解説を務めた佐藤信人プロは松山とトーマスの同組対決で生まれた勝負のアヤに注目した。

【佐藤信人が見た全米プロ2017】

【4日間ゴルフネットワークで解説を務めた佐藤信人プロ】
 
メジャーでトップ10入りは過去1回のトーマス
今年の全米プロはキャリアグランドスラムへ期待のかかるジョーダン・スピース、開催コースで過去に2回の優勝経験のあるローリー・マキロイ、メジャー初優勝を狙う松山選手やリッキー・ファウラーらが優勝候補として注目されていましたがトーマスの名前を聞くことはありませんでした。

それもそのはず、今シーズン序盤の「CIMBクラシック」、「SBSトーナメントofチャンピオンズ」、「ソニーオープンinハワイ」で立て続けに優勝して一躍有名に。それでも、これまでメジャーでは目立った成績を残せていませんでした。全米オープンでは3日目に当時のメジャー最小スコアに並ぶ「63」をマークしましたが、最終日に崩れて結果は9位。これがメジャー初のトップ10入りでしたが、その後は3試合で予選落ちと調子は良くありませんでした。

メジャーでの経験や大会前の調子の良さで言えば松山選手が圧倒的に有利。でも、トーマスが勝った裏には2人が同組でプレーした「勝負のあや」があったように思えます。

【松山英樹 3日目ホールバイホール】
 
大混戦の優勝争い、運を味方に流れを作ったトーマス
18ホールを振り返ってみると結果論ではありますが、1番のスタートホールから2人の明暗は分かれました。1.4mのバーディパットを惜しくも外してパーとなった松山選手に対して、トーマスは4mのロングパットを沈めてナイスボギー。スコアカードだけ見ればパー発進の松山選手の方が良いですが、プレーしている雰囲気はトーマスの方に流れが来るように見えました。 松山選手やトーマスを含めトップと2打差でスタートした5人はフロント9でスコアを落とすことなく、抜け出す選手もいませんでした。そこにスコアを伸ばしてきたパトリック・リードやフランチェスコ・モリナリが加わり優勝争いは混沌とした状態でサンデーバック9に入っていきました。

松山選手が首位で迎えた10番パー5で7mのロングパットを決めてバーディを奪ったのに対してトーマスは2度の「幸運」に助けられて流れを呼び込みました。ティーショットを左に大きく曲げたと思ったら木に当たってフェアウェイに戻ってくると、カップの縁で止まったボールが数秒経ってこぼれ落ちてバーディに。

松山選手が「よし、ここからだ!」とエンジンがかかりそうな状況をトーマスが止めたように見えました。プレーヤー心理としては良いショット、良いバーディパットを決めたのに、バタついたトーマスもバーディを取ったことは嫌な流れだと感じますね。
 
勝敗を分けた一打は16番のパーパット
【16番のパーパットを外して天を仰ぐ松山】

それでも11番のティーショットまで松山選手は良いゴルフをしていました。残り147ヤードのセカンドショットはバーディも考えられた。ところが、グリーン右に外して、1.3mのパーパットも決めることが出来ずにボギー。ここから歯車が狂い出して、結果3連続ボギーに。 一方のトーマスもメジャーの重圧からか14番、15番と足踏みをしたことで1打差に詰まり松山選手にもう一度チャンスが回ってきました。

勝敗を分けた一打は16番のパーパットですね。上がり3ホールは「グリーンマイル」と呼ばれ難しいホールです。トーマスは2mの渋いパーパットを決めましたが、松山選手は1.2mの微妙な距離のパーパットを外してボギー。トーマスとの差は再び2打となりました。続く17番パット3ではトーマスがバーディチャンスにつける会心のショット。松山選手はピンを狙うしかない追い詰められた状況で、結果はグリーン右に。

もし、16番でトーマスが外して松山選手がパーセーブしていたら並んでいたし、残り2ホールの展開は全く違っていたでしょう。もしくはお互いボギーであれば松山選手がオナーで17番は先に打つのでトーマスにプレッシャーのかけるショットを打つことができたかもしれません。
 
メジャーの借りはメジャーでしか返せない
【日本中に感動と興奮をもたらした松山英樹と進藤大典キャディ】

ホールアウト後の涙が象徴するように相当悔しかったと思います。今年の全米オープンは最終日にビッグスコアを出して追い上げる展開でしたが、今大会はこれまでのメジャーと違って優勝に近いところからスタートして一時はトップに立った。メジャーで勝つという想いが強かったからこそ、悔し涙になったんでしょう。

このあとはフェデックスカップのプレーオフシリーズやプレジデンツカップもありますが、「メジャーの借りはメジャーでしか返せません」。悔しい想いを胸に来年のメジャーでタイトルを獲って欲しいでし、松山選手なら必ずメジャーチャンピオンになれると思います。

今大会の優勝争いの中心は間違いなく松山選手でした。先週の「WGCブリヂストン招待」で優勝して、今週は優勝候補の筆頭に。メジャー制覇の期待も高くて、多くの人が深夜早朝に起きてTVの前で応援していたと思います。ツイッターを見ていてもみんな興奮しているのがわかったし、ゴルフに注目が集まったことは日本のゴルフ界にとって嬉しいことです。

ただ、松山選手一人ではなくて、メジャーの舞台で活躍する選手が複数人出てきて欲しいですね。松山選手だけでは結果が悪い時にトーナメントを見ないとなってしまうのは悲しいです。今回決勝ラウンドに進出した谷原選手、小平選手をはじめ、日本で頑張っている若手選手にとっても松山選手の優勝争いは良い刺激になったと思います。
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