海外男子

「僕はゴルフ科学者である」ゴルフの常識を覆す、超大型新人ブライソン・デシャンボー

2016年3月30日（水）午後0:16

今、世界最高峰のPGAツアーで最も注目されているルーキーがいる。それが、今季のマスターズで2日目まで首位争いをし、ローアマチュアを獲得したブライソン・デシャンボーだ。「ゴルフの革命児」と名高い期待の22歳は過去の実績も輝かしく、2015年には全米アマチュア選手権、NCAAチャンピオンシップで優勝と、アマチュアタイトル2冠を達成。このビックタイトルを同一年に制したのは、ジャック・ニクラス、フィル・ミケルソン、タイガー・ウッズ、ライアン・ムーアに続く全米ゴルフの歴史上5人目の快挙だ。

そんなデシャンボーは実績だけではなく、ちょっとした“変わり者"としても注目を集めている。ここではその常識をはるかに上回る彼の“変わり者"エピソードをいくつか紹介しよう。先ずひとつは憧れのベン・ホーガンに影響されたといい、ジュニア時代からプレー中は常にハンチング帽を愛用。もう一人の憧れ、ハンチング帽にニッカポッカがトレンドスタイルであった故ペイン・スチュワートの後を追って、南メソジスト大学に進学した。大学では物理学を専攻し「僕はゴルフ科学者である」とゴルフに関して様々な角度から研究し続け、クラブに関してのこだわりも人一倍強い。

さらに、周囲を驚かせたのはアイアンを全て同じ長さに統一していること。クラブは37.5インチ（95.25cm）に揃えており、ロフト以外はライとバウンス角も全て同じになっている。そして、アイアンとウェッジには1本1本名前が付けられていて、例えば、60度のウェッジには「キング」と刻んでおり、その理由として1960年にマスターズに勝ったのはキングことアーノルド・パーマーだからという。6番アイアンにはオーガスタナショナルの6番ホールの名前である「ジュピター」、3番アイアンはギリシャ語の3番目のアルファベット「ガンマ」と刻んでいる。「もしプロゴルファーでなければ、ゴルフ関連企業で運動科学の追求をしていた」と語るように彼は物理マニアで、科学者の頭脳を持った理論派で知性も備えているのだ。

先週行われたRBCヘリテイジでプロ転向を果たしたが、デシャンボーにはプロになってどうしても活躍しなければならないという強い想いがある。それは糖尿病を患っている“父親への恩返し"のためだ。父親のジョンさんは14年に2度のバイパス形成手術をし、その年腎臓が機能停止し足指を切断する難病にかかっている。アマチュアとして最後に出場したマスターズでは最終日にジョンさんに見守られ「父が泣いている時があり、私もそれを見て泣きました。プレー中ですから涙を見せないようにしましたが、決定的な瞬間がいくつかありました」と忘れられない大会となった。

そして迎えたプロデビュー戦、RBCヘリテイジでは通算5アンダーの4位タイと幸先のいいスタートを切ったデシャンボー。これまでの輝かしい実績、若さと端正な顔立ちに加え、個性溢れるキャラクター、そして独自のゴルフ理論を貫くデシャンボーが活躍するとなれば、これまでのゴルフ界の常識を覆すかもしれない。スター候補がまた一人ツアーに誕生したと言っていいだろう。

> ゴルフネットワークマガジン一覧

写真提供:Getty Images

デシャンボーのクラブは全て37.5インチ（95.25cm）になっており、アイアンとウェッジには1本1本名前が付けられている。マスターズの記者会見で語ったその由来を紹介。