海外男子

戦場のピアニスト

2015年11月26日（木）午後8:18

米フロリダ州オーランドより番組制作スタッフが、独自視点でお届けするユニークなゴルフ最新情報！

ドイツバンク・チャンピオンシップ優勝クリス・カーク（左）
年間王者を決めるフェデックスカップ・プレーオフシリーズ４連戦の２戦目、ドイツバンク・チャンピオンシップは、レイバーデイの祝日にあたる月曜日に幕を閉じました。初戦に続く大接戦を制したのは、初日のスコアが73と大会史上最も高い数字を記録したチャンピオンとなったジョージア大学出身、29歳、ツアー参戦４年目のクリス・カークでした。どちらかと言うとあまりなじみのない名前ですが、カークにとっては今シーズン２勝目（2013年マクグラドレー・クラシックで優勝）通算３勝です。最終ラウンドをトップで迎えたのはやはり今シーズン２勝目で通算３勝目を狙っていたカークと同じジョージア大学出身、25歳のラッセル・ヘンリー。奇しくもカークとヘンリーは、ジョージア大学時代７勝と歴代トップタイの記録を持つチームのエース的存在でした。その他上位には、このところ優勝争いの常連となっているジェイソン・デイやローリー・マキロイ、ライダーカップ出場を狙うウェブ・シンプソンらメジャーやWGCの大会で勝っているビッグネームばかり。そんな中、メジャーやWGCの大会、第５のメジャーと言われるザ・プレーヤーズ・チャンピオンシップで一度もトップテンにつけたことがないクリス・カークが逆転優勝。初日こそ出遅れたものの、決勝ラウンドでは勝って当然という見事なゴルフでした。

マキロイと２日続けて同組で回り、第３ラウンドはカークもマキロイも７バーディ、ノーボギーの64、最終日はカークが５バーディ、ノーボギーに対し、マキロイは５バーディ、４ボギー。世界ナンバーワンを相手に堂々のプレーぶり。第２ラウンドの17番でボギーのあと18番でイーグル、最後の37ホールボギー無しというまさに勝者にふさわしい内容。特に最終日17番と18番でラフにつかまりピンチとなった状況で、絶妙なショットでいずれもパーセーブ。18番パーファイブでは２打目、３打目とラフからでしたがバーディチャンスにつけます。パットもしっかり沈めながら淡々とゴルフを続けていたカークの表情が和らぎ、笑顔を見せた瞬間でした。ピアノが趣味のひとつというカークは穏やかな性格で、優勝争いの中でも感情をあらわににしませんでしたが、“あの状況で他の選手に比べれば落ち着いているように見えたかもしれないが、内心はドキドキだった ”と話しました。

そんなカークのバーディトライをフェアウエイから見つめていたのが、カークと１打差で迎えたパーファイブでティーショットを成功させたビリー・ホーシェルでした。カークがバーディパットを沈めれば、ホーシェルはイーグルを奪わなければプレーオフに持ち込めない状況・・・　ホーシェルはカークがバーディパットをはずすのを見て、イーグルで逆転優勝というシナリオを考えていました。しかし、ホーシェルはスタンスに恵まれたなかったこともあり２打目をダフってしまい、ボールはグリーン手前のハザードにつかまり万事休す。打った瞬間、苦笑いというショット。“４日間で最悪のショットだった”と話したホーシェル。逆転のチャンスの時にワーストショットを打ってしまった自分に苛立っていると素直に語ったホーシェルも27歳と、アメリカ期待の若手の一人です。

日本期待の若手二人、松山英樹選手と石川遼選手はプレーオフ２戦目で明暗を分けました。松山選手は、体調不良もありドイツバンク・チャンピオンシップで57位タイと奮いませんでしたが、フェデックスカップ・ランキング30位で３戦目、木曜日から始まるBMWチャンピオンシップに進みました。
石川遼選手一方、予選落ちを喫した石川選手は、フェデックスカップ・ランキング72位で上位70人に食い込めず、初挑戦のプレーオフ２試合を戦って敗退となりました。
今週の大会を終えてプレーオフシリーズの４戦目、最終戦となるツアーチャンピオンシップに進めるのはランキングの上位30人だけ。そこでポイントがリセットされるため、数字の上では30位の選手にも最終戦を制してフェデックス・カップの年間王者となるチャンスはあります。しかし、リセットで30位の選手がもらえるのは210ポイントに対し、首位は2500、２位が2250、３位が2000、４位が1800、５位が 1600ですから、仮に210ポイントで大会を迎えた選手が優勝し、2500ポイントを獲得し2710ポイントになっても、トップランクで臨んだ選手が大会を最下位の30位で終え、205 ポイントしか取れない限り、フェデックスカップランクを30位で迎えた選手の逆転はありえません。上位ランクで迎えた選手が全員下位で終わることは考えられないため、夢のボーナス賞金10億円強を手にするためには、可能な限り上位でツアーチャンピオンシップを迎えないといけないのです。トップ５で臨めたら最終戦優勝で年間王者になれます。
松山選手は現在1530ポイントで30位。首位のカークは4154、２位のマキロイが3335、３位のハンター・メイハンが3311、４位のジミー・ウォーカーが2823、５位のマット・クーチャーが2618ポイントですから、彼らが今週上位につけらず、松山選手が優勝で2500ポイントを加えて4030ポイントになれば、トップ５でツアーチャンピオンシップを迎えることは充分考えられます。

2007年BMWチャンピオンシップ優勝　タイガーウッズ BMWチャンピオンシップは1899年にウエスタン・オープンとして始まった歴史を誇る大会で、ベン・ホーガン、バイロン・ネルソン、サム・スニード、ジャック・二クラス、トム・ワトソンら伝説のゴルファーが優勝し、タイガー・ウッズも４勝している大会。2012年のチャンピオンはマキロイ、去年はザック・ジョンソンが勝ちました。90年代に入ってからは、ほぼ毎年シカゴ郊外のコグヒルで開催されてきましたが、2012年はインディアナ州のクルックド・スティック、2013年はイリノイ州に戻りコンウェイ・ファームズが舞台となったあと、今年はコロラド州のチェリーヒルズ。チェリーヒルズでPGAツアーの大会が行われるのは、1985年にヒューバート・グリーンが優勝した全米プロ・ゴルフ選手権以来。1990年チェリーヒルズで全米アマチュアを制したのはフィル・ミケルソン。それもかなり昔の話ですし、今のミケルソンは決して好調とはいえませんから、ほとんどの選手にとって初めて挑むコースとなれば出場の70人、誰が勝ってもおかしくありません。

全日本軟式野球で延長50回の新記録誕生、テニスの全米オープンで日本人として92年ぶりに８強進出を果たした錦織圭選手の快挙のニュースのあと、松山選手がフェデックスカップ・ランキングで急上昇！そんなヘッドラインを期待します。

なお火曜日に発表になったライダーカップの指名選手は、ヨーロッパ･チームがイアン・ポールター、スティーブン・ギャラカー、リー・ウエストウッドの３人。アメリカはキーガン・ブラッドリー、ハンター・メイハン、ウェブ・シンプソンとなりました。