米フロリダ州オーランドより番組制作スタッフが、独自視点でお届けするユ ニーク なゴルフ最新情報！

2013年の秋に始まったPGAツアーのレギュラーシーズン最後の大会「ウィンダム チャンピオンシップ」は今年で75周年を迎えました。

1938年第一回大会の勝者はサム・スニード（同大会通算８勝）、1940年はベン・ホーガン、1941年と1945年にはバイロン・ネルソンが優勝と、伝説のゴルファーが次々に名乗りをあげた大会で今年サム・スニード・トロフィーを授与されたのは、コロンビア出身のカミロ・ビジェガスでした。

先々週の全米プロに勝るとも劣らない大接戦、しかも今週から始まるフェデックスカップ・プレーオフシリーズや来季のシード権をかけてのレースもあったものの、コースにつめかけたギャラリーはそう多くはなく、ノースカロライナの森に拍手や大歓声が鳴り響く展開とならなかったのは残念でした。そんな中、初日63でトップに立ったあと、続く2日間で3つしかスコア伸ばせず、リーダー達よりもかなり早いスタートとなったビジェガスが、過去3年のフラストレーションを吐き出すかのように、前半だけで6アンダーとし後半1バーディを加え、再び63をマークしトータル17アンダーでフィニッシュ。ヒース・スローカム、フレディー・ヤコブセン、そして54ホールのリーダー、ニック・ワトニーといった上位スタートの選手がビジェガスを助ける形となり、ビジェガスは2010年のザ・ホンダクラシック以来となる通算4勝目をマークし、フェデックスカップ・ポイントランクで105位から37位へ、世界ランキングで254位から112位まで上昇しました。
ゴルフの名門フロリダ大学出身、2004年にプロに転向したビジェガスは、2006年米ゴルフダイジェスト誌が選ぶ“ツアーで最もセクシーなプレーヤー。
鍛え上げられた肉体で2010年にはESPNマガジンの"Body Issue"号でヌードを披露。
パットのラインを見るビジェガスのオリジナルスタイルのポーズをとった一糸まとわぬスパイダーマンの登場にゴルフファンだけでなく全世界のスポーツファンが注目。その姿でカミロ・ビジェガスを知った人も多かったはずです。

そんな大胆な一面もあるビジェガスですが、フィットネスにもゴルフにも必死に取り組むまじめ人間。2008年プレーオフシリーズでは、初戦こそ予選落ちだったものの、続くドイツバンク・チャンピオンシップで3位、3戦目のBMWチャンピオンシップでツアー初優勝、そして最終戦ツアーチャンピオンシップではプレーオフでセルヒオ・ガルシアを下し2勝目をマーク、その年の年間王者、ビジェイ・シンに551ポイント差の2位につける大健闘。翌年2009年はフェデックスカップ最終順位で42位、通算3勝目をあげた2010年は20位、2011年は33位でしたが、2012年はトップテンが一度もなく148位と低迷。2013年シーズンは10位以内が2回だけ。今季もザ・プレーヤーズ・チャンピオンシップの前後4試合連続予選落ちを喫するなど、ここ3年ビジェガスらしくないシーズンが続いていました。先月のPBCカナディアン・オープンでは、初日73のあと棄権。ゴルフからしばらく離れようと故郷コロンビアに戻り、愛する両親や家族と過ごし、レースをするほど大好きなサイクリングで気分転換を図ったそうですが、その時の走行距離がおよそ650キロというから驚きです。

1年前、米ゴルフダイジェスト誌のインタビューの中で、“好調な時はそれがスタンダードになるが、時としてそれが足を引っ張ることがある。向上だけを願うあまり、新たなスタンダードに固執してしまう。それはいいことでもあるが、そうとはいえないときもある。人生に感謝することを学んだ"と話していたビジェガス。生存競争が激化する一方のツアーで優勝が究極のゴールではないエリートプレーヤー達は、頂点に立ってもさらに自分を高めることにこだわるあまり壁にぶちあたり、遠征を楽しめなくなることもあるでしょう。そんな時気持ちを切り替えるために愛するゴルフと同じくらい夢中になれること、それがビジェガスにとってサイクリングなのです。山も多いコロンビアの雄大な景色、そして自宅がある南フロリダの海岸線、Ａ１Ａをロードレース用の自転車で走る時、ビジェガスの頭の中には白い小さなボールへのこだわりはありません。サム・スニードカップに愛おしそうにキスしたビジェガスはまだ３２歳。今季最後のレギュラーイベントはビジェガスにとって新たな始まりに過ぎません。

ウィンダム・チャンピオンシップに世界ランク18位と最高位で臨んだ松山英樹選手は一打及ばず予選落ちでしたが、今季ここまで20試合に出場し、ザ・メモリアルトーナメントでの初優勝（今季の最年少チャンピオン）を含むトップテンが４回、２億５千万円あまりを稼ぎ、フェデックスカップ・ランク22位でプレーオフシリーズに挑みます。

一方、２日目ツアーでの自己ベスト62で初優勝に大きく近づいた石川遼選手は70位に終わりました。石川選手は今季22試合に出場、去年の10月のシュライナーズ・ホスピタルズ・フォー・チルドレン・オープンでの２位タイが自己ベスト、トップテンに３回つけるなど１億３千万円近い賞金総額でフェデックスカップ・ランク７５位につけています。

二人ともプレーオフシリーズは初挑戦。125人でスタートし、100人、70人と減っていき、ツアーチャンピオンシップに進めるのは30人だけ。二人そろって最終戦まで進み、そこで10億円を超えるボーナス賞金をかけてツアーのビッグネーム達と一戦を交えてほしいものです。フィル・ミケルソンは現役の選手の中で10年連続優勝とトップですが、今季はまだ優勝がなく現在ポイントランクで45位。ミケルソンが記録を更新することができるかどうかも注目されます。
なお今田竜二選手は、フェデックスカップ・ランク195位でウェブドットコムツアー・ファイナルズ出場が決まりました。

先週はビジェガスの他にもう一人、ヒーローがいました。それは氷の入ったバケツの水を頭からかぶる"ICE BUCKET CHALLENGE“を受け入れたティム・フィンチェム・コミッショナーです。リレー式に指名していくこのチャレンジは難病ALSのための寄付金集めが目的で動画を添えるのが条件。冷水をかぶるのが嫌なら100ドルを寄付するというもの。
イアン・ポールターが指名した選手の中にはタイガー・ウッズも入っていました。タイガーの動画はアップされていませんからおそらくパスしたのでしょう。ちなみにフィンチェム・コミッショナーはワイシャツネクタイ姿でTPCソーグラスの名物17番ホールを背景にザブーン！小さなアイスキューブが頭のてっぺんに少し残ったのも愛嬌、堅物なイメージがあるコミッショナー、少し見直しました。

その後、ついにタイガーはローリー・マキロイと一緒に“ICE BUCKET CHALLENGE"に参加しました。お互い冷水をかけあった新旧の世界ナンバーワン。タイガーにノミネートされた一人、ラファエル・ナダル、マキロイに指名されたウエイン・ルーニー、二人の動画も楽しみです。

年間王者を決めるレースも残すところあと４試合。プレーオフ初戦は「ザ・バークレイズ」。ディフェンディングチャンピオンはこのところ存在感がちょっと薄いアダム・スコットです。

ライダーカップ出場を断念したタイガー抜きのプレーオフでも主役、準主役候補は数え切れないほど。これ以上嬉しいことはありません。

「ザ・バークレイズ」放送日時
１日目：8月21日(木) 深夜3:00?7:00 (※衛星生中継)
２日目：8月22日(金）深夜3:00?7:30 (※衛星生中継)
３日目：8月24日(日）午後7:00?10:00 (※衛星中継)
最終日：8月25日(月）午後7:00?10:00 (※衛星中継)

筆者：Makiko Minoya
1995年 州立セントラルフロリダ大学 ジャーナリズム科卒業
1996年 ゴルフチャンネル入社（米フロリダ州オーランド）
好きなゴルファー：タケ小山プロ

［画像は全て©Getty Images］