海外男子

“ＮＥＷ　ＦＡＣＥ”

2013年1月20日（日）午前9:45

米フロリダ州オーランドより番組制作スタッフが、独自視点でお届けするユニークなゴルフ最新情報！

オーランド界隈は日曜日最低気温が15度前後まで下がり、日中は大きな青い空の下、大変気持ちのいい一日でした。
そんなさわやかな日曜日ですがすがしく週が明け、今週はいよいよPGAツアー2014-15年シーズンの開幕です。
先週まではまた一年が始まるなんて実感わかないと思っていたのに、ちょっと秋めいた風にあたっただけで、ついに新しいシーズンが今週から始まる！と自分が参戦するわけでもないのにその気になってしまいました。

一年前から２年にまたがるシーズンとなり、ヨーロッパで2014年を締めくくる人もいれば、昨シーズン優勝し余裕ができた人や、すでにオフシーズンに入り、年内は日本やオーストラリアを始め海外遠征を残すのみという選手もいます。
となれば、初優勝を狙う選手にとっては大きなチャンスです。ＰＧＡツアーのルーキーで今季、石川遼選手と一緒に初優勝しそうな感じがする私の一押し選手、アメリカのトニー・フィナウを紹介します。

「トニー・フィナウ」プロフィール
・1989年9月14日ユタ州ソルトレークシティ生まれ、25歳
・身長193センチ、91キロ。
・2007年 17歳でプロ転向。
・2014ウェブ・ドットコム・ツアー、　ストーンブレイ・クラシックで優勝するなど賞金ランク8位でツアーに昇格。

フィナウのことを、ゴルフチャンネルのリアリティ番組、ビッグブレーク・ディズニーゴルフで覚えている方もいると思います。
さまざまなチャレンジを勝ち抜いた選手に、主にツアーの大会への出場チャンスを与えるというこの番組に、トニーは19歳だった2009年、1歳下の弟、ギッパーとともに挑戦。トニーは決勝で、PGAツアーのパット・ペレツの弟、マイク・ペレツに惜しくも敗れました。

トンガ出身の父親とサモア生まれの母親（2011年交通事故で他界）、ポリネシアの血が流れるトニーは兄弟4人、姉妹が2人の10人家族で育ちました。豊かな暮らしとは言えず、家族の中でゴルファーはトニーとギッパーの2人だけ。両親は2人が道を外れないようにとゴルフを習わせました。
?ギッパーが6歳でジュニアの大会で頭角を現すと、ギッパーのお兄ちゃんと言われるのは嫌だとトニーも真剣に始めますが、弟を倒すの４年かかったとのこと。トニーは12歳でジュニア・ワールド・ゴルフチャンピオンシップで優勝、2004年と2006年にはジュニア・ライダーカップに出場。

高校時代は、長身を生かしバスケットボールでも大活躍。高校3年と4年の時、ユタ州の決勝大会に進んだのもトニーのおかげと言っていいほどで、4年生の時は、一試合あたり11リバウンド（ＮＢＡ選手のトップは13.6）だったそうです。
そんなフィナウにはバスケットボールの名門大学から次々と誘いが来ましたが、奨学金に見向きもせずゴルフを選びます。
そして高校卒業と同時にプロに転向。2007年、17歳の時でした。

プロに転向したのはラスベガスで行われた“ULTIMATE GAME"というプロモーションイベントに挑戦するためでもありました。
その大会でファイナリストとなった12人は当時の優勝賞金としてはPGAツアーのどの大会よりも多い200万ドルをかけて戦いました。フィナウは8位につけて10万ドルを獲得。36ホールのストロークプレーで勝者が賞金を一人じめという大会で優勝したのは、PGAツアーのスコット・ピアシー、インスタントミリオネアを狙っていた中には、ケビン・ストリールマンや2度の心臓移植で知られるエリック・コンプトンもいました。

弟のギッパーも16歳のプロとして同じ大会に挑み、賞金は手にできませんでしたが、ギッパーはその前年、2006年のウェブ・ドットコム・ツアーの大会で、史上最年少16歳で予選突破という輝かしい記録を残しています。
その後、2人そろってゴルフチャンネルのビッグブレークに挑戦したこともあって、ハワイの有名リゾートコースと契約を結んだり、プロとしての滑り出しは順風満帆に見えました。
しかし、プロの世界はそれほど甘くはなく、トニーはミニツアーを転戦し、PGAツアーカナダを経て、2014年ウェブ・ドットコム・ツアーに初めてフル参戦。23試合に出場し、1勝を含むトップテン5回、14試合で25位以内につけ賞金ランク8位で見事PGAツアーへの切符を手にしました。
PGAツアーは、初めて出場した2007年US・BANKチャンピオンシップで74位タイにつけ、7960ドルを稼ぎ、翌2008年同大会で予選落ち、2011年はソニーオープンで決勝ラウンドに進めず、今週、シード権を持つ選手としてのデビュー戦、フライズ・ドットコム・オープンが通算4試合目の挑戦となります。

トニー・フィナウの魅力は豪快な飛ばしかもしれませんが、最大の武器は25歳になったばかりとは思えない落ち着きです。
17歳でプロに転向しウェブ・ドットコム・ツアーで優勝するまでの時間を、“7年もかかった”ではなくて“7年しかかからなかった”と考えられるタイプに見受けられます。
何が起きてもおかしくないツアーで一喜一憂しない、それは2014年のウェブ・ドットコム・ツアーでトータルイーグル数首位、トータルバーディ数4位、平均ストローク69.43で9位という成績に匹敵する強みです。
トニー・フィナウそして口調も穏やかで人の良さそうな笑顔。ファンにならずにはいられません。
金銭的に恵まれた環境で育たなかったかもしれませんが、きっと強い絆で結ばれた愛情いっぱいの家庭だったのではないか、そう思わせてくれるスマイルです。
すでに二児の父親でもあるフィナウは、日本のエースの2人松山英樹選手や石川遼選手ほど若い頃からプロの大会で活躍してきたわけではないものの、ジュニア時代の経歴は文句なしですし、フル参戦初年度のウェブ・ドットコム・ツアーでいきなり優勝・・・今週の開幕戦、フライズ・ドットコム・オープンで3人による優勝争いになったら最高です。
そうならなかったとしても、“天国の母に捧げるPGAツアー初優勝”というサブタイトルでフィナウの記事が今季見られそうな気がします。
もちろん、その前に石川選手の勝利を期待しています！