PGAツアー今シーズン最強のメンバーがそろったファーマーズ・インシュランス・オープン。私達の期待は絶頂に達していましたが、タイガー・ウッズが初日に棄権、日本の松山英樹、石川遼のほか、フィル・ミケルソン、ジョーダン・スピース、ジャスティン・トーマス、ダスティン・ジョンソン、、ジャスティン・ローズも2日で消えてしまうという予想外の展開。でもそれで見る人が居なくなったわけではありません。それがPGAツアーの選手層の厚さを物語ると同時に、先週も最後まで誰が勝つかわからない大混戦でサンディエゴの町は盛り上がりました。

J.デイが思い描いた世界No.1への道のり

プレーオフに残った4人、ジェイソン・デイ、J.B.ホームズ、ハリス・イングリッシュ、スコット・スターリングス（ディフェンディングチャンピオン）は、いずれもPGAツアーの優勝経験者。その中で勝利を手にしたのは最も大舞台に慣れているジェイソン・デイでした。

　“去年中に世界の頂点に立つ自分を想像していた"と語ったデイ。

　2014年の初戦、ファーマーズ・インシュランス・オープンで2位タイのあと、ビクター・デュビィソンとの死闘の末、WGCマッチプレー選手権で優勝したのですから当然でしょう。しかしその後親指を痛めマスターズには出場したものの３ヶ月の離脱を余儀なくされたり、秋には腰を痛めるなどデイが思い描いた頂点への道のりはより険しいものとなってしまいます。

　年末は腰の完治に専念するため故郷オーストラリアへの遠征を断念。12月の非公式戦2試合で上位につけたあと、ヒュンダイ・トーナメント・オブ・チャンピオンズの開幕を待ち望んでいたデイ。そこでの3位タイで優勝が誓いことを確信したことでしょう。今年メジャーでジェイソン・デイがブレークすると信じる人は多いですが、私もその一人です。世界ランクで自己ベストタイの4位に返り咲いたデイはまだ27歳と若いのにやるべきことをわきまえ、それに向かってもくもくと努力を続けています。トロフィーを掲げる自分を思い浮かべるイメージトレーニングも功を奏しているのでしょう。12歳で父親を失い深い悲しみも苦労も経験済みのデイは、ゴルファーとして人としてうまくバランスが取れているように見えます。そんなデイに感銘を与えた本の主役がタイガー・ウッズ。そのタイガーは今や終わったのかと言われるほどの大ピンチ。

タイガー・ウッズの胸の内

　前週のフェニックス・オープンに続き、ラフからラフへというタイガーのショットを見て笑いをこらえられないギャラリーがテレビに映った時、なんだか悲しくなりました。以前なら気分が乗らない時、記者の質問にも答えずコースを去ったタイガーでしたが、今は自己最悪のスコアを出してもマイクの前に立ち全ての質問に答えています。それは素晴らしいことですが、そんな姿がなんだか悲しく見えます。

　(不調は)スイング改造で何度も経験済みのこと？それでもあれだけひどいアプローチショットなんて今まであったでしょうか？

　タイガーも人の子と言われるまでに長い年月を要した無敵といわれたゴルファーの頭の中にもついに“もしもこのまま終わってしまったら"という恐怖心が忍び込んできたのではないでしょうか？そんな自分を認めたくなくて、“新しいスイングが完成されていないのだから仕方ない"と自分自身に言い訳しているのではないでしょうか？そもそも腰の手術後の復帰が早すぎたことから始まったのだと私は思いますが、それも自分には思ったより時間がないかもしれないという心のあせりがあったからかもしれません。

　一日も早く試合の勘を取り戻そうと、今年は長年出ていなかった大会に出場。そこで思ったよりも仕上がり具合が悪いことに打ちのめされ、何とか次はと思ったものの、今度は体が思うように動いてくれない、まさに踏んだりけったり。82を叩けば、タイガーにもう怖いものはないでしょう。この際じっくり休んで腰に負担をかけないスイングで調整し、全米一の心理学者について精神力では誰にも負けないタイガーに戻ってから復帰し、“もう終わった"と見ている人達を見返して欲しいものです。タイガーが祖父のように慕っていたというチャーリー・シフォード氏も今頃天国でアール・ウッズ氏とどうしたら世界一の頑固者を説得できるか話し合っているかもしれません。

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絶好調 J.ウォーカーが大会連覇を狙う、PGAツアー最古のプロアマ戦

　さて、今週はジミー・ウォーカーのタイトル防衛戦、AT&Tペブルビーチ・ナショナル・プロアマです。

　先週の景色も雄大でしたが、今週はさらに選手が太平洋に近づき、ビーチから打つ可能性もある大会。地球上でも特に美しいといわれる多くのゴルファーの憧れのコース、ペブルビーチ・ゴルフリンクスを始めとするカリフォルニア州モントレー地域の3コースで、芸能スポーツ界のセレブとPGAツアーのプロ達が繰り広げる笑いに満ち溢れるプロアマ戦。去年はウォーカーがシーズン3勝目をマーク。ウォーカーは1997年のデビッド・デュバル(今年は選手として出場)以来、1970年以降では5人目となるPGAツアー最初の3勝を同じシーズンに達成した選手となりました。

　ウォーカーの名前がファンの間に定着したのもこの頃でした。今週は2週連続優勝を狙うジェイソン・デイとジミー・ウォーカーに加え、2009年と2010年の勝者で昨年2位タイのダスティン・ジョンソンの争いが期待されます。

　1937年から始まったPGAツアー最古のプロアマ戦は、歌手で俳優のビング・クロスビーが友人を招いたチャリティトーナメントが前身で、ハリウッドの大スター達も大会史を飾ってきました。ランチョ・サンタ・フェ・ゴルフクラブが舞台だった第一回大会の勝者はサム・スニード。悪天候のため18ホールに短縮された大会でスニードが手にした賞金は500ドル。今年のチャンピオンは1,224,000ドルを手にします。大会4勝のスニードのほか、ベン・ホーガン、バイロン・ネルソン、先週83歳でこの世を去ったビリー・キャスパー(2勝)、ジャック・二クラス（3勝）、ジョニー・ミラー（3勝）、トム・ワトソン（2勝）、フィル・ミケルソン（4勝）と、過去73人の勝者のうち34人が世界ゴルフ殿堂入りのレジェンド達。今年マーク・オメーラ（大会最多の5勝）が殿堂入りを果たせば、35人になります。
　日本の松山英樹、石川遼は出場しませんが、PGAツアー復帰を目指す今田竜二が出場します。

　そういえば、土曜日はバレンタインデーですね。日本では友チョコや自分チョコなどが人気だとか・・。アメリカは男性が女性をもてなす日、奥さんや恋人をディナーに連れて行ったり、ジュエリーをプレゼントしたり、オフィスの机にもデリバリーの花が目立つ日です。チョコレートも昔に比べるとたくさんスーパーに並んでいます。当日大慌てで大きなテディベアのぬいぐるみとハート型のチョコを持って、レジに並んでいる人も結構います。今週、１億５千万円弱の優勝賞金でパートナーの目にハートを散りばめるのはどの選手でしょうか？

PGAツアー「ＡＴ＆Ｔ ペブルビーチ ナショナル プロアマ」

【放送日時】『全ラウンド生中継』
１日目：2月13日（金）午前5：00?8：00(LIVE)
２日目：2月14日（土）午前5：00?8：00(LIVE)
３日目：2月14日（土）深夜3：00?翌8：00(LIVE)
最終日：2月15日（日）深夜3：00?翌8：00(LIVE)

筆者：Makiko Minoya
1995年 州立セントラルフロリダ大学 ジャーナリズム科卒業
1996年 ゴルフチャンネル入社（米フロリダ州オーランド）
好きなゴルファー：タケ小山プロ

（写真提供:Getty Images）

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