小松直行の週刊オフチューブ
2014年3月13日(木)午後0:19
LIVE FROMのMCや欧州ツアー中継の実況を担当している小松直行アナウンサーが、ゴルフ最新ニュースをピックアップ。小松さんならでは視点からゴルフ界の最新動向をお届けします!
目次:
*今週の欧ツアーはトロフィー・ハッサン・ドゥー(ハッサン2世国王トロフィー)
*モロッコ国王の宮殿内のコース!
*小松の小耳
?トロフィー・ハッサン・ドゥー(ハッサン2世国王トロフィー)?
北アフリカはアラビア語でマグリブ、「太陽の沈むところ」、日、いずる国、日本からは、ここが最果てになりますね。地中海をはさんでむこうはスペイン、ポルトガル。モロッコは日本とほぼ同じ緯度。今週の開催地、アガディールは北緯30度、鹿児島の南あたりになりますか。
1971年に始まったトロフィー・ハッサン・ドゥーは、今年通算41回目、2010年からヨーロピアンツアーの公式戦になって5回目となりました。1999年になくなったハッサン2世国王のゴルフへの思いの込められた試合です。
モロッコのゴルフは1914年にタンジールにロイヤル・カントリークラブが開場してから今年で100周年。いまでは国内に35コースあり、進行中の建設プロジェクトが12。欧州主要都市から空路3時間以内で、年間300日は晴れというゴルフ天気。故ハッサン2世は、自身、ゴルフを愛好したばかりでなく、ゴルフ・ツーリズムにも着眼。ロバート・トレント・ジョーンズ・シニアに依頼して全45ホールのロイヤル・ゴルフ・ダー・エス・サラムをラバトに造ったのが1971年。国際規模のチャンピオンシップ開催と、一般客を想定した7500ヤードのレッドコースは、すぐに世界のゴルフ界の注目を集めました。
その年に始まったこのハッサントロフィーは、欧ツアー公式戦となるまではオフシーズン恒例の風物詩的イベントとして、ラバトで開催されてきました。
「そんな昔のことは忘れたよ」という方にも、とりあえずは穏やかな春のモロッコを堪能していただけると思います。乾いた土、白い家、迷宮と砂漠、見上げるアトラス山脈。自由フランス、カサブランカ、ハンフリー・ボガード、イングリッド・バーグマン。「君の瞳に、乾杯!」
まさに、“隠れた宝石”!
プレイしたいと思っても、できないコースは世の中にたくさんあります。今週の舞台は王宮の庭の中。「ゴルフ・デュ・パレホヤル:王宮コース」と呼ばれますが、一般のゴルフファーに向けて営業されているわけでもありませんで、国王が賓客を招いてプレイするばかりの、超プライベートコース。設計は現代ゴルフコース設計のレジェンド、RTJシニア、亡きハッサン2世国王に依頼されて1987年に完成。かつて90年代に、欧ツアーにはモロッコOPという試合があって、ここで6度開催。このハッサントロフィーでは2011年からここで開催。
“ヒドゥン・ジェム(隠された宝石)”という言い方は、まさにこのコースのことでしょう。大西洋を臨む美しいアガディールの海岸線、テラコッタの塀に囲まれた王宮の庭、寄せる波の音と潮風の中につくられた国王のためのコース。伸びやかに、豪快に打ち、繊細なタッチを求めてくるデザインはRTJシニアの意匠。そして、亡き、ハッサン2世国王のゴルフへの思いがこめられています。
「こんなに無垢なコースは、ツアーではほかにはない」とプレイヤーたちは口々に言います。
「完璧なコースです」とリッチー・ラムゼイ。
「それだけではなくて、とてもタフなんです」とロバート・ロック。
「ここでプレイできることはツアープレイヤー冥利に尽きる」とデヴィッド・ハウエル。
「世界にひとつしかないコースです」とマルセル・ジーム。
【トロフィー・ハッサン・ドゥー放送日時】
1日目:2014年03月13日(木)午後11:30?深夜2:30
2日目:2014年03月14日(金)午後11:30?深夜2:30
3日目:2014年03月15日(土)午後11:00?深夜2:00
最終日:2014年03月16日(日)午後11:00?深夜2:00
*去年はドイツのマルセル・ジームが初日に64で3打差単独首位。そのリード維持したまま17アンダーにして2011年優勝のデビッド・ホーシーを近づけることなく完勝。今年はモロッコ入りの機中で首を寝違えてプロアマを欠場。痛みはまだ引かないが本戦は出ると言ってます:「もし、明日の朝もまだ痛くても、プレイする。ディフェンディングの機会はそうあるものじゃないですからね。」「だいたい、ゴルファーならいつでもどこかが傷んでるものですよ。どこも怪我していないときなんて、ほとんどありえない。だからきっと、大丈夫だろうと思います」。去年のジームは、米PGAツアーの結果を待って発表される世界ランキングで50傑に入ってマスターズ招待を勝ち取りたいところでしたが、かなわず。めげずに翌週、アメリカへ渡って最後のチャンスにかけましたが、残念ながらおよばず。
?小松の小耳?
夫婦、兄妹、カップルの同時優勝に期待:今週のモロッコでは欧州の男子ツアーと女子ツアーが同時開催。王女のイニシアティブで1993年に始まったプリンセス・ラッラ・メリエム・カップは、2010年からLET:レディース・ヨーロピアンツアーの試合となっていて、男子の舞台パレ・ホヤルのお隣のゴルフ・デ・ルスィオンで開催される。同じ都市で同じ週に開催されるようになったのは2011年からだが、ローペ・カッコ(フィンランド)とミネーア・ブロムクイスト夫妻にとってはこれ以上の好都合はないだろう。フランソワ・ケルメル(仏)は2部ツアー時代にガールフレンドのジェード・シェーファーの活躍に刺激されて勝った経験があるが、今週はいかに。スペインで同棲中のイスタニスラオ・ゴヤ(アルゼンチン)とカーリー・ブース(スコットランド)の二人もそろって上り調子。兄妹ならラファエル&エマ・カブレラ・ベヨ、そしてグレゴリー&メロディー・ブーアディー。
R・ノックス、ライダーカップの潜在ジレンマ : 米PGAツアー、今月始めのホンダクラシックではプレイオフの末に優勝を逃したラッセル・ノックスはスコットランド、インバネスで生まれ。母はスコットランド人で、父はアメリカ人。彼は英米両方の国籍をもつ。もしも、さらに好成績を続けて今秋のライダーカップ出場が見えてくるとしたら、欧サイドでとなると、あらかじめ欧ツアーのメンバーとして規定試合数をこなさなくてはならないが、アメリカ代表としてならば、今から宣言しておけば条件上、可能となる。本人はツアーカードの維持が一大目標で、ライダーカップのことは考えたこともないと言うが、注目される。過去にはプレイジデンツカップに際して、アメリカ人の父をもつアーロン・バデリーが同じ立場から、インターナショナルサイドを選んだ例がある。
<資料:http://www.golfbytourmiss.com/>
欧ツアー“レース・トゥー・ドバイ”は2017年まで継続:火曜日、欧ツアーの賞金ランキングであるレース・トゥー・ドバイが2017年まで継続されることが発表された。2009年にオーダーオブメリットという名称に代わって導入され、ボーナス制度の組み込まれた年間ランキングには、これまでリー・ウエストウッド、マーティン・カイマー、ルーク・ドナルド、ローリー・マキロイ、そしてヘンリク・ステンソンが頂点を極めている。今季はボーナス総額が500万ドルに増える。シーズン最終戦はジュメイラ・ゴルフエステートのアースコースで開催されてきたが、今年から2017年までは同ファイアーコースが舞台となる予定。新たに建設されているクラブハウスには欧ツアーのインターナショナル・オフィスが入居することにもなっており、ドバイと欧ツアーの提携関係は継続強化される。
スティーブ・ウィリアムズは今季で引退:A・スコットのキャディー、スティーブ・ウィリアムズ(50歳)は帯同キャディーとしてツアーでバッグを担ぐのは今年いっぱいでやめると語った。かつて、レイモン・フロイド、グレッグ・ノーマン、タイガー・ウッズについて数々のメジャー優勝に貢献したウィリアムズは「キャディー生活も36年目。この数字はゴルフでは区切りのいいところ。50歳になったところだし潮時だ。仕事は十分したとはいわないが、旅は十分すぎるほどしたと思う」。2011年、ウッズの不倫スキャンダルの後に一方的に解雇されたことについては、「まだわだかまりが解けていない。ひざを突き合わせて二人でゆっくり話をすることもなかったからだが、いずれそういう時も来るだろう」と語り、今のウッズには「他のプレイヤーを圧倒する威圧感が失せてしまった」と言った。
J・ドナルドソンも米PGAツアー“スペシャル・テンポラリー・メンバー”に:WGCアクセンチュアマッチプレイで惜敗のビクター・デュビィソンに次いで、先週のWGCキャデラック・チャンピオンシップで2位タイに入ったジェイミー・ドナルドソンも米PGAツアー本格参戦へ向かう。非メンバーとしての累積フェデックスポイントが2013年度の150位ラインを軽々と超えたことで手続きをする権利が生じ、今後は“スペシャル・テンポラリー・メンバー”として無制限にスポンサー招待を享受できることになり、シーズン終了時点でフェデックスカップ・ポイントか賞金ランキングが125位以内となれば来季(2014?15年シーズン)のフルメンバーとなれる。すでにそれぞれの去年のラインはクリアする実績だ。
先週のキャデラックについては、最終日にパトリック・リードを追いかける立場でいて16番では刻んでパーにしたことをスポーツイラストレイテッド誌の記者が「臆病者」とツイ?トして、逆に他プレイヤーやキャディー、メディア関係者から総攻撃を受けている。欧ツアーファンなら、ドナルドソンがいかに自分のプレイを淡々と続けて勝つタイプかは知っているはず。初優勝のアイリッシュオープンでの最終ホールの6番アイアンはすごかったし、先週も17番の2打目は見事だった。欧ツアー中継を見る米メディア関係者が増えることを祈る。
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