小松直行の週刊オフチューブ ?今年もKLGCCで開催のMMO、DCのLWはじめETの精鋭が乗り込みATの猛者たちが迎え打つ!
2015年2月5日(木)午後0:23
LIVE FROMのMCや欧州ツアー中継の実況を担当している小松直行アナウンサーが、欧州ツアーの最新動向や見どころ等を、小松アナならではの視点でお届けします。
目次:
■今年もKLGCCで開催のMMO、DCのLWはじめETの精鋭が乗り込みATの猛者たちが迎え打つ!
■小松の小耳:キャディーがPGAツアーを訴えた
■こまつのソラミミ♪
MMO:メイバンク マレーシア オープン
首都クアラルンプールは2月でも23-32℃。湿度が極めて高く、ゴルフをすれば汗と一緒に集中力も流れてしまいがちですが、マレーシアのゴルフの歴史はアジアでも深く長いのです。
もとより、錫と天然ゴムの世界的産地。となれば、ティンカップとガッタパーチャ、ゴルフとはゆかりの地であるわけですね。かつてアジアサーキットの拠点の一つだったマレーシアオープンは、いまやアジアツアーと欧州ツアーの共催イベントです。午後には雷雨が来るので、試合は中断することもたびたびですが、連覇しているトンチャイ・ジャイディー曰く、「熱帯アジアのゴルフに必要なのはクールでいることだ」。納得。
マレーシアオープンは1962年に、当時の極東サーキットのひとつとして始まりした。第一回から80年代半ばまでロイヤル・セランゴールGCで開催(74年を除く)。歴代優勝者のリストには石井朝夫(1964、65)、細石憲二(1968)、河野高明(1969、71)、村上隆(1972)、杉本英世(1973)各氏の名前があります。1999年に欧亜初の共催イベントとして、欧ツアー・インターナショナル・スケジュールに組み入れられ、マレーシア・ゴルフ協会、アジアツアー、欧州ツアーの3者共催イベントとして現在に至っています。
優勝杯はシーグラムトロフィー(Seagram Trophy)。1962年第一回開催時にスポンサーだったカナダの酒造メーカー、シーグラム(The House of Seagram)社が6000リンギットを拠出して寄贈した銀杯です。2006年から、マレーシア最大の銀行メイバンクが冠スポンサーとして長期契約。今年の賞金総額は300万ドルで2014年より25万ドル増えました。 。
2014年振り返り
リー・ウエストウッドが初日65から単独トップに立ったまま、最後は7打差をつけ完勝。ニコラス・コールサーツが追いかけるも週末に伸ばせず。初日72で出遅れたルイ・ウーストヘイゼンが盛り返し、バーント・ビースバーガーが最終日に67で気を吐いて、その3人が2位タイ。パブロ・ララサバルが2Rの残り5H時点でスズメバチに攻撃されて池に飛び込むというアクシデントもあった。
数箇所を刺されながらもララサバルはめげずにプレイを続行し、最終的には8位タイに終わった。
日本勢3選手が出場、川村昌弘13位タイ,小林正則カット落ち、片岡大育は二日目朝ウォームアップ中に首故障で棄権。
地元マレーシア勢
ベテランのダニー・チア(42歳)に加えて、24歳のアリー・イラワンが急成長中。 去年はマレーシア国内ツアーのプレイヤーズ・チャンピオンシップに勝ち、先週マレーシア国内で開催されたアジアの下部ツアーであるADT(Asian Development Tour)の試合で勝って上り調子。ワールドランキングもチアを抜いてマレーシア勢ではトップです。
地元マレーシア人チャンピオンの生まれていないこの試合、ニコラス・ファン(Nicholas Fung)、リザル・アミン(Rizal Amin)、シャーバン・フシン(Shaaban Hussin)といったプロに加えアマチュア4人を含む22名が、優勝を目指すことになりますが、みんなその先には来年のリオ五輪を見ている様子。オリンピック出場のためにはまずはワールドランキングを上げていかなければなりません。五輪ゴルフのフィールドは60名ですから狭き門ではありますが、いまイラワンが357位、チアが429位となっています。
KLGCC:クアラルンプールG&CC
中心街から8km、空港から63km(50分)のブキットキアラ地区にあるKLGCC:クアラルンプールG&CCが舞台です。
オリジナルは1991年に開場。設計はロビン・ネルソン&ロドニー・ライト(Nelson&Haworth設計事務所)。西・東の36ホールあり、マレーシアオープンでは西コース(6967ヤード、パー72)が使われます。
2007年2月にテッド&ジェフ・パースロー(Ted and Geoff Parslow)により総費用5000万米ドルを投じた改修改造がはじまり、西コースは2008年10月にリオープン。改修作業はその後も続き、2009年3月に完成。東コースも改修されて2010年に再開場。レイアウト、ルーティングはオリジナルから大きく変わっていませんが、芝はティフドワーフからパスパラム(Paspalum Supreme)に全面的に張替えられました。つねに豪雨にさらされるので、サブエアシステムが導入されています。
10月には米PGAツアーのCIMB クラシック(賞金総額700万ドル)、米LPGAのサイムダービーLPGAマレーシアもこのコースで行われています。
【メイバンク マレーシア オープン 放送日時】
1日目:2月5日(木)午後4:00?7:00
2日目:2月6日(金)午後4:00?7:00
3日目:2月7日(土)午後4:00?7:00
最終日:2月8日(日)午後4:00?7:00
欧州ツアーで鍛えられた、とB・ケプカ:先週のフェニックスオープンでアメリカでの初優勝を遂げたブルックス・ケプカ(米、24歳)が優勝後の記者会見で、欧州ツアーでの経験が自分を強くした、と語った。米Qスクールに失敗したときにはひどく落胆したが、逆にやる気につながった。2012年には欧州2部のチャレンジツアーに招待出場を受けて8試合目に優勝。翌年は3勝して即時昇格。そして2014年のターキッシュエアラインオープンで見事な勝利をものにした。すでにワールドランキングは33位まで上昇。「今年はアメリカで勝ってプレジデンツカップに出たいと願っていました。その次はもちろん、ライダーカップ。それが目標ですが、できない理由はない。メジャーで戦う準備はできてると感じます」。「僕は世界最高のプレイヤーになりたいんです」とも言っていた。欧州ツアー経験のあるケプカがライダーカップに出てくるとなると、アメリカはこれまでにない新しい世代のチームになりそうだ。
<資料:ロイター、2015年2月2日付記事>
鼻血は止まったA・キロス:アルバロ・キロス(スペイン、31歳)が前回、ドバイで最終日にホールインワンを決めた2011年は優勝をもぎ取ったが、先週のオメガ・ドバイデザートクラシックでは最終日にキャリア5つ目のホールインワンも決めて64であがったが、20位タイに終わった。「ひどいもんだぜ、最初はベルフリーの12番、次がウエールズの3番、そしてアブダビの12番で、4つめがこのドバイでの2011年の11番。全部ホールインワン賞がかかってなかったホールなんだぜ!」早いスタートでお客さんも見ていなくて拍手もなく、逆光で自分でもホールに入るところは見えなかったという。先立つカタールでは鼻血が止まらず、土曜日にスペインに飛んで日曜日に手術を受けて、火曜日にドバイに戻ってきたというキロス。3泊4日で往復1万1000キロの強行軍で臨んだドバイでは、まだスムーズに息ができない状態だったが、最終日の64は「2013年KLMオープン以来のロースコアだ」と自ら語るほど上出来で手ごたえを感じている様子。キロスの豪快な勝ちっぷりが今年はまた見たいですな。
<資料:http://www.golfbytourmiss.com/>
訃報:ケル・ネーグル:オーストラリアのレジェンド、ケル・ネーグルが1月27日の夜に亡くなった。94歳だった。礼儀正しく奥ゆかしい振る舞いから「ミスター・モデスティー(Mr. Modesty)」と呼ばれたネーグルは1946年にプロ転向し1975年までに豪ツアーで61勝。そこには豪オープンや6勝している豪PGAといった豪ツアーの主要な試合も含まれるが、ニュージーランドでのPGA,オープンにそれぞれ7勝していることも特筆される。ネーグルは全英オープンが100周年を迎えた1960年にセントアンドルーズで優勝。1965年には全米オープンでゲイリー・プレイヤーにプレイオフで敗れた。2007年に世界ゴルフ殿堂入りしている。
訃報:チャーリー・シフォード:2月3日の夜には、同じく世界ゴルフ殿堂の一員、チャーリー・シフォードが亡くなった。92歳だった。アフリカ系アメリカ人ゴルファーとして、1961年に、それまで白人しかメンバーになれなかったPGAツアーでプレイする資格を勝ち取った。タイガー・ウッズの活躍もシフォードの切り開いた道の上にある。ウッズはシフォードに対して、敬意をこめて「私のおじいちゃん」と呼んだ。2004年い世界ゴルフ殿堂入り。去年11月にはオバマ大統領から「大統領自由勲章」を授与された。大統領自由勲章は最高位の勲章であり、これまでアーノルド・パーマー、ジャック・ニクラスとシフォードの3人しか授与されたゴルファーはいない。1月の末に肺の感染症でクリーブランドの病院に入院し、脳卒中も併発していたが、様態は安定していると伝えられていた。
F・ノビロがCBSの中継チーム入り:ゴルフチャンネルの解説者で元欧州ツアープレイヤーのフランク・ノビロ(ニュージーランド、54歳、欧州5勝)が、2015年からは米ネットワークのCBSのゴルフアナウンサーとしても画面に登場する。CBSは春のマスターズ、夏の全米プロをはじめ、PGAツアーの試合も中継する。引き続き、ゴルフチャンネルのニュースプログラム、ゴルフセントラルのアナリストも務める。今年は忙しくなりそうですね、ノビロさん。
シンガポールオープンが2016年から復活!:2012年にアジア最大規模の600万ドルという賞金総額を誇っていたシンガポールオープンは、その年を最後に休止されていたが、日本の三井住友銀行が冠スポンサーとなって来年から復活する。日本ツアー(JGTO)とアジアツアーの共同開催。両ツアーから最低60名出場、全156人のフルフィールドとなる。3年契約で、賞金総額は2016年に100万ドル。以降の増額も期待されている。2012年にはセントーサGCでマテオ・マナッセロがウーストヘイゼンとのマラソンプレイオフを制して優勝を遂げた。欧州ツアーは共催から外れたことになる。来年1月末開催ということで、日本ツアー、アジアツアーの双方にとってシーズン緒戦となる。プロモーターはワールドスポーツグループ(WSG)である。WSGはアジアツアーのライバルであるワンアジアツアーのパートナーだ。WSG代表のシェイマス・オブライエン氏は、シンガポールオープン復活発表の記者会見でワンアジアツーについて質問された時、かなりいらだった様子だったと伝えられている。
<資料:ロイター、2015年1月28日付記事>
ロイヤルトルーンも女性メンバー受け入れか:全英オープン開催の10コースのうち女性メンバーを受け入れていないのは3つ。そのうちのひとつであるロイヤルトルーンが、会員規定の見直しに入った。2016年以前英オープン開催予定だが、その前に初の女性会員が生まれているかもしれない。ほかの二つのクラブ、ミュアフィールドとロイヤルセントジョージスも検討中であると伝えられている。トルーンには女性だけのクラブ、レディースGCトルーン(Ladies Golf Club, Troon;会員数370名)もある。しかし、女性クラブのメンバーは全英オープン開催コースを自由に回ることは許されておらず、パッティングの練習グリーンも使えないという。一方で、来年の全英オープンではロイヤルトルーンとレディースGCトルーンの両者が全英オープンのホストクラブとなることが決まっている。二つのクラブが共同ホストになるのは全英オープン史上はじめてのことである。
<資料:http://www.telegraph.co.uk/、2015年1月27日付記事>
キャディーたちがPGAツアーに対して集団訴訟:ダブリンではRマキロイの裁判が進行中だが、あらたな訴訟問題がアメリカで浮上。キャディーたちがPGAツアーを訴えている。2月3日にロイターが伝えたところでは、ツアーの試合でキャディーが身につけなければならない前掛け(ビブ;bib)には、いくつかの企業名やロゴが入っており、それは年間5000万ドルものPGAツアーの収入源になっているのに、それを身につけるキャディーには何の見返りもないのはおかしいのではないかという声が上がった格好だ。火曜日にカリフォルニアの連邦裁判所に提出された訴状では、キャディーがビブを身につけることを拒否すれば、トーナメントで働くことが出来なくなるとツアーから脅かされるという状況もあるという。原告団の主導的人物はPGAツアーでのキャディー歴35年のマイク・ヒックス。Gノーマン、Pスチュワート、Sストリッカー、Jレナードらのキャディーとして働いていた。
<資料:ロイター、2015年2月3日付記事>
全英オープン中継はBBCからスカイへ:欧州での全英オープンの生中継はこれまで一貫してBBCが担ってきたが、2017年からスカイスポーツに変わる。BBCは無料で見ることが出来たが、スカイスポーツは有料だ。1961年から中継にかかわってきた“ボイス・オブ・ゴルフ"ピーター・アリスもついに引退ということになる。スカイは2017年から2021年までの生中継の権利を獲得した。BBCのこれまでの契約は一年当たり700万ポンドであったのに対し、スカイは1000万ポンドをR&Aに支払うものとされている。BBCの中継スタイルにはこれまで批判的な声もあり、一方で米PGAツアー、欧州ツアー等を中継しているスカイに対する中継技術の評価は高い。2017年はロイヤルバークデール開催。私は個人的に、ゴルフアナウンサーとしてのキャリアのはじめがBBCの全英オープンだったので残念。あのテーマ音楽を聴くだけで、いまも初心に帰ることができる気がするのだが・・・。
<資料:ロイター、2015年2月3日付記事>/span>
新コラム:「えっ、何か言った?」・・・・ゴルフ中継で気になる用語をチェック!
「オーナーとオナー」
ティーショットのオナーを「オーナー」と言ってしまえば、かなりの率で同伴競技者に嗤われるかもしれません。言い方ひとつで“ゴルフ教養"が知れる、とかなんとか言われたりして。でも、あんまり硬いことを言わない方がいいんじゃないかと思うのです。
ゴルフのオナーは英語の“honor"で名誉、特権と言った意味。ゴルフではティーショットを最初に打つ権利、またはその権利を有するプレイヤーを指して使いますよね。ゴルフについては記述を辿れるだけで19世紀後半から使われているので、正統的ゴルフ用語の一つと言っていいでしょう。この“honor"は読み方をカタカナで書いて「オナー」と表記されるのが一般的。「オーナー」と言ったり書いたりしてしまうと、我々は「所有者」の意味の“owner"のことだと考えるわけです。確かに、我々はそういう感じの暗黙の約束で使い分けているはずですが、目くじらを立てるほどのことはないのではないでしょうか。
カタカナ表記はきわめて便宜的なもので、たとえば英語のfやv、thやrの絡むような音は日本語に無いために、カタカナで書ける近い音に置き換えているわけでしたね。日本政府は「内閣告示」というお達しでその基準や法則を示してくれています。しかし、現実はケースバイケース、というよりかなり場当たり的と言えそうですし、伸ばす音、長音については、綴りから決めてしまったのではないかという慣用表記があったりします。日本語には発音の高低のアクセントはあっても、基本的に英語のような強弱のアクセントがないことも作用して、カタカナ表記は元々の英語の発音からかなり離れてしまいます。
さらに、英語がいったん日本語に取り込まれると、日本語の話し言葉の法則が作用してします。“owner"は、英語の発音から音だけ拾えば「オウナー」と表記されるはずのところが、「オーナー」になっています。話し言葉では、母音が重なった場合は「伸ばす音」にされる、「二重母音は長音化される」という法則があります。英語を日本語の中で使おうとすると、こうやってもともとの発音から離れて一人歩きをしてしまうわけなんですね。
カタカナ表記は所詮、妥協の産物なので、こだわりすぎるとかえっておかしな理屈になってしまう。“honor"は「オナー」でも「アナー」でもあり得たし、「オーナー」と書かれても読み方一つで間違いではないでしょう。「キミがオーナーだよ」と言われて、「ぷっ!」と噴き出したりしてはいけません。だいたい、ボギーの“bogey"だってホントは「ボウギ」でもよさそうなものだし、英語圏の人だって「ボーギ」にも「ボーギー」にも聞こえる言い方をするわけですから。
(小松直行)
・・・・・・・・・・・・・・・・次号空耳予告:そうは言っても人名はどうなのか。