LIVE FROMのMCや欧州ツアー中継の実況を担当している小松直行アナウンサーが、ゴルフ最新ニュースをピッ クアップ。小松さんならではの視点からゴルフ界の最新動向をお届けします！

芸術や音楽の感動が永遠なら、ゴルフはあまりにも刹那い。残されるのはスコアカードだけで、あとは実際に見た人々 の記憶の中。そしてつねに、ゴルフは振り出しに戻る。いまこのひとときを逃してはならないのです。

目次：
＊リオネスオープン
＊エフゲニー・カフェルニコフ出場
＊歴代勝者の肖像：ラファエル・カブレラベヨ（2009）
＊小松の小耳：ヒメネスの新居はウィーン、サー・ニックがアバディーン出場、ライダーカップの副キャプテンをさらに二人・・・・

リオネスオープン・パワードバイ・グリーンフィニティー
磨き方次第で、輝きを失ってしまうこともあるのです。舞台はヨーロッパの十字路 、ウィーンの北西、アッ ツエンボーク のコース、その名はダイアモンド。今週はオーストリアのナショナルオープンです。
オーストリア共和国は北海道とほぼ同じ大きさに９つの州があり、人口845万人。この国のゴルフは、欧州諸国がそうであるように２０世紀のはじめに遡 ることができますが、70年代はじめまでは城の数の方がゴルファーよりも多いと言われていました。2014年現在、コース数は156、連盟登録ゴルファ ーは 2000年以降に毎年10％の増加を見せてきましたが、ここ数年、10万4千人強で落ち着いています。

「ゴー・イースト」を実践してきた欧ツアーでは北隣のチェコとともに大陸欧州で最も東の試合。もとより1990年に欧ツアー公式戦となって96年まで開催 。初回はランガー優勝、96年はポール・マギンリー。その後は下部チャレンジツアーの試合として1997年から2005年まで開催（2000年は休止）。2006年、 10年ぶりに欧ツアーに返り咲いて9年目となりました。

舞台は2003年からフォンタナＧＣで７回。2010年第２０回大会からウィーン北西近郊、車で30分、アッツエンボークのダイアモンドＣＣへ移って５年目。 ザ・ダイアモンド・コースはジェレミー・パーン（英）設計、2000年完成、2002公式開場。

<リオネスオープン powered by Greenfinity　放送期日>
1日目：2014年06月10日（火）午前5：00?7：00
2日目：2014年06月11日（水）午前5：00?7：00
3日目：2014年06月12日（木）午前5：00?7：00
最終日：2014年06月12日（木）午前7：00?9：00

＊ミゲル・アンヘル・ヒメネスとヨースト・ラウテンが全米オープン直前 の一仕事。ラウテンはディフェンディングチャンピオン。「いったんコースへ出 たら、去年勝ったことなんて思い出さないと思う。このコースで成績が いいからって、優勝候補だとは言えない。欧州ツアーではどんなトーナメントも勝 つのはたいへん難しいのです。だから連覇は問題じゃなく、ベストを 尽くすのみです」とコメント。

＊＊2012年にこの大会でキャリア2勝目を逆転でものにしたバーント・ビースバーガーは世界ランキング69位で、この試合の成績で9人抜きを果たせれば、 パインハーストへ行きの切符が手に入ります。前週スウェーデンの試合を敢えてスキップして、力を蓄えてフレッシュな気持ちで母国のナショナルオープ ンにかけようと意気込んでいます。

＊＊＊テニスファン必見です。ロシア、ソチ出身、元プロテニスのエフゲニー・カフェルニコフが出場。40歳。いまやプロゴルファー。1996年の全仏オー プンで、ロシア選手として初の4大大会優勝者になったのはカフェルニコフでしたね。ローランギャロスの赤い土を思い出しつつ・・・。

過去大会勝者の肖像
その一瞬に生きる：ラファエル・カブレラ・ベヨ（2009年）
「とにかく、目の前のことだけを考えようとしたんです。きのうは、前半にいい数字が出たところで、スコアのことを考え始めてしまった。同じ過ちを繰 り返したくなかった。きょうも前半を30にしましたが、フロントナインのスコアのことは完全に忘れていました」

＊芸術や音楽の感動が永遠なら、ゴルフはあまりにも刹那い。残されるのはスコアカードだけで、あとは実際に見た人々の記憶の中。そしてつねに、ゴル フは振り出しに戻る。いまこのひとときを逃してはならない。

最終組の3組前であがってきたラファエル・カブレラ・ベヨは、生涯で初めてのロースコアを出した興奮に震える口調で冒頭のように言った。それもその はずで、11個のバーディーをものにするめくるめくラウンドだったのだ。
2009年、秋深まるウィーン郊外、フォンタナGCは素晴らしい天気に恵まれ、２万人を超える観客が訪れた。 主役というなら、 今週は初めから最後まで、 イングランドのベン・バーハムだった。初日から首位に立って連日リードを伸ばし、3打差の単独首位で最 終日に入っていた。この年はあまり稼げておら ず、来季の年間出場権を確保するために崖っぷちのバーハムが初優勝を狙う、というのがストーリーだっ た。
バーハムは緊張のためか、前半こそバーディーが来なかったが、11番、12番と連続で決め、16番でもとって69で回ったが結局勝てなかった。8打差にいた カブレラ・ベヨが14番ホールまでの12ホールで9つのバーディーを決めてトップを奪ってからも、バーハムは踏ん張ったのだが、最終ホールでティーショ ットがラフに入ってしまい、今週はずっとものにして来たバーディーが取れずに終わった。
カブレラ・ベヨは、ことごとくピンに絡む冴えたアイアンで3連続、4連続、2連続バーディー。16番ではひどいラフからもブレないサンドウエッジのフル ショットでピン奥につけて10個めを決めたのは見事の一言だった。圧巻はパー5の最終ホールだったろう。池に沿って右に曲がっていくフェアウエイに長 大なティーショットを放ち、グリーンの右側に続くウォーターハザードに臆せず旗を狙って9メートルにつけ、欧ツアー史上初の59が出るかと大いに期待 させた、鮮やかなフィニッシュだった。

「あれを入れれば59だとは思ってませんでした。59は、残り3ホールというところで気になりましたが、17番でバンカーに入れてしまって、とにかくパー にしたかったんで、そのことはまったく忘れてしまいました」

フィニッシュ直後にそう語っていたが、若さ、一途さのなせるわざ、といったらいいのか、ゴルファーにとって偉業の象徴のような59というスコアのこと を頭の中から追い出して、目の前の一打に集中できるというのは、ひとつの特技、特殊な才能に違いないと思えてくる。
最終日、彼以外の65人のプレイヤーの平均スコアが70で、ヨースト・ラウテンの64が最少だったし、初日にバーハムが63を出していたがプリファードライ が許されていた上でのスコアだったから、いかに60が凄まじいスコアだったかわかる。

｢いや、ただびっくりしてます。私の生涯最高のゴルフだったでしょうね、信じられません」

欧ツアーではまだ60の壁は破られていない。60というスコアはダレン・クラークが2度、記録しており、カブレラ・ベヨは13人目となった。ともあれ、60 で8打差を逆転しての初優勝である。試合後、落ち着きを取り戻してからのインタビューでは、勝てるかもしれないと思ったかという質問に、次のように 答えていた。

「最初はきのうの10番ティーに上がったときですね、フロントナインを6アンダーで回って来ていて、勝つことを考え出して、ほかのプレイヤーはどんな 状況だろうかと思い始めました。そうしたら、バックナインは1オーバーに終わりました。

「きょうは、ベン（バーハム）から8打差あったし、勝つことは考えず、ただ、いいゴルフがしたかった。前半はうまくいって30で回ったところで、私は 自分に言い聞かせました。きのうと同じ間違いをするなよ、一打一打に集中するんだぞ、ってね。

「リーダーボードを見ないように努めました。見てしまうとプレッシャーがかかると思ったんです。14番ホールで目に入ってしまって、自分がトップにい るのがわかって、集中しなきゃと考えてました。

「すべて、プラン通りに運びましたね、きょうは。目の前の一打にベストを尽くそうと考えて出て行って、すべてがうまくいきました。パットもよかった し、全部で何パットだったかな、おそらく20パット台でしょうね」

　<プロフィール>
ラファエル・カブレラ・ベヨ:1984年5月25日、グラン・カナリア島ラスパルマス生まれ。 187cm、81kg。6歳時、コースに接する自 宅の 裏庭でゴルフを 始め、U-7からU-18まで12年連続でスペインのナショナル・チャンピオンシップ優勝。
2001年には欧州アマチュア選手権に優勝、2002 年には17歳のアマチュアとしてグラン・カナリア島開催のスペイン・オープンに出場し4位タイ。優勝した S・ガルシアに6打差、2位のE・カノニカに2打差 だった。2005年にはアマのうちに、カナリアス・プロ選手権で優勝している。その年にプロ転向し、Qス クールを経て2006年は2部チャレンジ・ツアーで戦 い、オーストリアの試合で初日9バーディー、ノーボギーの61で首位に立ち、そのまま優勝している。
賞金ランキング13位で欧ツアーに昇格し、2007年は 、32戦16回カット落ちで134位に終わる。
2008年は再びチャレンジツアーでトップテン6回、スイスで1勝をあげ、14位昇格。09年は4T、5T、4T、6Tがあって、9月のオーストリアでの初優勝に至っ た。大学での経済学、経営と商法の勉強は続けようとしていたらしいが、チャレンジツアーで成績が出るにつれ、学位取得は中途になっているという。妹 のエマ（Emma）もプロ・ゴルファーでレディース・ヨーロピアンツアーで戦っている。
資料：1）大会公式インタビュー・スクリプト
2）欧ツアー公式ウエッブサイト：www.europeantour.com

【小松の小耳】
ヒメネス、ウィーンに転居：オーストリア、ウィ ーンとなれば、モーツァルトか、ハイドンかと期待さ れもするが、これからはヒメネスだ。5月にスペインで結婚式を挙げたあと、ミゲル・アンヘル・ヒ メネス夫妻はオーストリアの首都ウィーンに引っ越し た。今週のオーストリアでのリオネスオープンはヒメネスにとってホームゲームとなった。水曜日 のプロアマ戦では夫婦で回って、しごく上機嫌だった模 様。
3年前にトーナメントで知り合ったスザーンさんのハンディーキャップは9で「コースで何をしなきゃいけないかを知ってる」と、ヒメネスは心地よさそう 。前週のスウェーデンでは週末にショートゲームが冴えずに70位に終わったが、全米オープンへ向けて、リオネスオープンのコースは格好の腕試しになる という。「ゴルファーならいつでも進歩したいもの。試合に出るたびに今度こそと思うはずだ。つねに可能だというわけじゃないが、つねに目標なんだ」 と語ったヒメネス。ツアー史上最年長優勝記録のさらなる更新と、欧州ではじめての50歳代ライダーカッパーを狙う。

スコティッシュオープンにファルドが5年ぶり出場：今年も全英オープン直前週に開催のスコティッシュオープンにはディフェンディン グチャンピオンのフィル・ミケルソンをはじめ、アメリカからのスタープレイヤーが出場予定。リッキー・ファウラー、ジミー・ウォーカー、ライアン・ パーマー、マット・エブリー、ケビン・ストリールマン、欧ツアー新人賞のピーター・ユーラインは迎え撃つ格好。ローリー・マキロイ、ジャスティン・ ローズ、ダレン・クラークも含め、翌週のロイヤルリバプールでの全英オープンとの連戦を計画しているのはメジャー6勝、56歳のサー・ニック・ファル ド。スコティッシュオープンはロイヤル・アバディーンで7月10日から。

ライダーカップの副キャプテンをもう二人：今年9月末のライダーカップへ向けて、欧サイドキャプテンのポール・マギンリーはすでに スコットランドのサム・トーランスとアイルランドのデス・スミスを副キャプテンに指名しているが、もう二人を加えたいと考えている。メジャー3勝の パドレグ・ハリントンは現在の調子ではメンバー入りは難しい状況。しかし、サポートチームに声がかかれば是非と考えている。「もちろん、呼ばれれば 担いたい。いつかキャプテンになるための、いい修行になるからね」というハリントン。ただ、すでにアイルランドからスミスが入っているので、大陸欧 州の候補者が現実的ではないかとも感じている様子。ホセ・マリア・オラサバル、ミゲル・アンヘル・ヒメネスの名前はささやかれているが・・・。